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カテゴリ:ふたりのマダム・ジリー
「ああ、ジェラール、どこに行っていたんだ?」
「ちょっと用足しにね。ところで、君の天使はどこにいるんだ?」 「娘なら、懇意にしているシャニュイ伯爵家の別荘に。 私の調子が悪くなってから、あずかっていただいているんだ。 午後に一度、顔を見せにくるよ。」 「彼女はもう、10歳になるんだろう?君の世話をさせても・・・。」 「歌をね、歌わせているんだ。レッスンに差し支えるし、 私の肺病をうつしたくないんだよ。ああ、やってきたようだ。 ジェラール?どこへ行く?」 「彼女に会うのは、今はご免蒙らせていただくよ。この成りでは、 父上を連れにきた死神に見えるかもしれないからね。」 私はすぐ隣の部屋のドアから、父娘の様子を見ることにした。 娘はグスタフのベットに近づき、父親の顔色が悪くなっているのを 心配そうに覗き込んでいる。 ほっそりした体つきの、いつも夢見るような瞳をしていた彼女の母親の幼い頃に、 やはり似ているような気がする。 髪の色は、バイエルンの方だろうか。 「お父さま、お願い。あのお話を聞かせて。」 「君は、天使の話が大好きだね。」 「だって、だってもし、お父さまとお会いできなくなったら・・・。」 「そうだよ、クリスティーヌ。私がいなくなっても必ず、君のところに 音楽の天使がやってくる。君を歌の道に導くためにね。」 「どうやったら、お会いできるの?」 「君が、いつまでも天使のことを信じていれば。」 「ああ、もちろん信じるわ、お父様。天使はどんな様子をしているのかしら? きっと、とても美しいわね。声も素晴らしいに違いないわ。 背がとても高くて、瞳の色は透き通るようなブルーで、髪は・・・。」 「クリスティーヌ、もしかすると、音楽の天使は姿は見せてくれないかもしれないよ。 とても誇り高く、人間には近寄り難い存在だからね。」 「まあ。ではどうして天使がやってきたことがわかるの?」 「歌だよ。一度聞いたら、君にはそれが天使のものだと、きっとわかる。」 「はい。」 「じゃあ、クリスティーヌ、今日レッスンした歌を聴かせておくれ。」 娘はか細い声で歌い始めた。 まだ決して上手いとはいえない。 だが、このピッチの正確さはどうだろう。 歌が中盤に入るにつれ、彼女の声は少しずつ伸びやかになり、 高音域も無理なく出していることがわかった。 あきらかに、私がこれまで会ってきた少女たちとは違うようだ。 私は、久しぶりに胸が高鳴るのを覚える。 「どうだったかな、彼女の歌・・・。」 娘が帰ると、グスタフはドア越しの私に呼び掛けた。 「聴いていたんだろう?ジェラール。気に入ったかどうか、教えてくれ。」 真っ直ぐこちらを見る瞳が、私を捉えた。 「聞かなくても、親である君が一番よくわかっているだろう、彼女の才能は。」 「では、天使のオーディションには合格だね。」 「天使の?」 「そうだよ、ジェラール。シシーとの約束だろう?困った時は、いつでも助けにくると。」 「・・・。」 「僕はこの10年、その約束を果たし続けた。今度はジェラールの番だよ。」 グスタフは朗らかに笑った。 「ちょっと待ってくれ。クリスティーヌと過ごしたのは、君が恋に殉じたからではなかったのか?」 「もちろん、そうだよ。恋する人とそっくりな少女が育ってゆくさまをみるのは、 愉しいことでもあり、息がつまるほど苦しいことでもあった。 決して手に入れられない親娘を、二代に渡って見つめ続けてきたのだもの。 だから次の10年は、君がこれを味わうべきだよ。」 「私は、恋などしたことはない。」 「ジェラール。賢いものほど、自分のことが見えないというのは本当だね。 いいかい。君には母親がいて、いつも恋しいと思っていただろう?隠しても無駄だよ。 僕は君と、ひとつベッドに寝入ったことが何度もあるんだからね。 眠ると心にしている蓋がはずれてしまうんだよ。 シシーにそっくりな、君の母親にころあいの女性を描いているのも見ているし。」 「だから?」 「君がいままで、いろんな女性を渡り歩いているのは知っているよ。 だけどね、そういった男が本当に愛せるのは、聖母ただひとり。 そして母親の幻影を、完全に手放さない限り、幸せは決して訪れない。」 「・・・。」 「クリスティーヌは、きっと美しくなるよ。今はまだなにも思わないかもしれないけれど、 きっと今に、君は恋に狂う。僕が妖精に殉じたようにね。」 「・・・。」 「一度、遊びではなく、完全に狂ってみたまえ。手の届かないものをそばに置き、 恋する苦しさを味わうんだ。 そうすればきっと、見るべきものが見えてくる。」 肺病特有の、赤みが刺した頬でグスタフは言い募り、すべてを言い終えると 寝入ってしまった。 私は取り残され、死の舞踏会について考えるどころではなくなってしまう。 恋、恋、恋など! 「二人のマダム・ジリー 28章 エリック 1874年 『約束』」 *** 追記・3000票を越えました☆「オペラ座の怪人」再上映リクエスト ☆「オペラ座の怪人」投票&アンケートでリクエストを! 東京のシネアミューズさんの「あなたが選ぶ思い出の一本」。 毎日1回ずつ投票できます。 ぜひ、皆さまのお力をお貸しくださいね。 シネアミューズ サイトのトップ「あなたが選らぶ思い出の一本」→「2005年」(2005年がクリックできないときは、 いったん他の年代をクリックしていただくとできるようになります。)→ 「オペラ座の怪人」(左列上から6番目)→「この作品に投票する」 15位→11位→9位→8位→7位→5位→4位→3位と徐々に順位が上がり、 ついに、2位になりました。 皆さまのおかげですね。ありがとうございます☆ さきほど、結果を拝見。最終的に4位になりました。 1ー4位は3000票を越え、ほとんど拮抗する大健闘。 シネアミューズさんもその点、ご考慮いただけるかと思います。 さきほど、すかさずアンケートをお送りしておきました。 ランキング投票のほかに、アンケートでもオペラ座の怪人のリクエストをお送りすることができます。 (トップページの右下の「アンケート」というボタンより。) うなぎのぼりの票数と応援文。 両サイドからお願いすれば再上映の可能性、高くなるかと思います。 皆さまの常日頃の熱き思いを書き綴り、お送りされてみてはいかがでしょうか? 一ヶ所で決まると連鎖反応で広がってゆくのはwakaba21さんのサイトで実証済みですので、 シネアミューズさんのように何を根拠に再上映されたかが明らかになれば、 他の地域にもこの動きが出ると思います。 「オペラ座の怪人」公開一周年を目指して、日本全国津々浦々まで再上映されるといいなと。 9日の結果が楽しみですね!! 「オペラ座の怪人」再上映の動きをこのまま全国に、あなたの街にまで広げましょう! さきほど、結果を拝見。最終的に4位になりました。 1ー4位は3000票を越え、ほとんど拮抗する大健闘。 シネアミューズさんもその点、ご考慮いただけるかと思います。 さきほど、すかさずアンケートをお送りしておきました。 *** ムービースター一月号人気投票にて、ジェラルド・バトラー氏が めでたく一位に御還り咲きでございます。 付録のカレンダ付きクリアーファイルにも、トップの一月に登場。 裏表紙にも真ん中と別枠にて掲載☆ おめでとう、ジェリー!皆さまのお力の結晶ですね☆ 「ベーオウルフ アンド グレンデル」、「ゲーム オブ ゼア ライブス」に 関するインタビューも、とても詳しく載せていただき、 イン・ロックさま、感謝いたします☆ ☆最新号のお知らせボタンから、アンケート・フォームに進むと インロック社さん「Moviestar」誌に投票&希望をお伝えできます☆ ☆11月13日生まれ・・・蠍座・水のグループ 情愛のある人と人との関係を大切にする星座群。 来年は新しいことをどんどん見つけて愉しむ年。 御一緒いたしますわ☆ 【聖なる怪物 ジェラルド・バトラー氏をご堪能あれ】 【再入荷!2006年カレンダー】 ☆ムービースター誌さんへのファンメール 今回もジェラルド・バトラー氏の記事に多くのページを割いてくださってありがとうございます。おかげさまで、全国に「オペラ座の怪人」の再上映の動きが広まり、ついにこちらでも半年ぶりに、伏見ミリオン座さんで大晦日オールナイトが挙行されることになりました。これもこれまで熱くバトラー氏に関する記事を掲載してくださった、地元紙ムービースターさんのお力が非常に大きく、バトラー氏にお目にかかれない間、貴誌がどれほど心の支えになっていたか、計り知れません。本当にありがとうございます。2005年にブレイクし、もっとも安定した人気を保っているバトラー氏。彼を招いた作品公開一周年イベントなど主催してくださったらとてもうれしいのですが。今後もどうぞよろしくお願いいたします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 7, 2006 06:24:52 PM
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