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じゃくの音楽日記帳

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2009.09.07
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カテゴリ:演奏会(2009年)
東京室内歌劇場41期第123回定期公演 実験オペラシリーズ
指揮:中川賢一
演出:飯塚励生

を聴きました。曲は、ヒンデミットの「往きと復り」、ナイマンの「妻を帽子と間違えた男」(日本初演)という、何やら怪しげなタイトルの演目二本立てです。
9月5日と6日、第一生命ホール。僕は初日を聴きました。

最初がヒンデミットの「往きと復り」。開演前に長木誠司氏のプレトークがあり、その解説で、演奏時間わずか12分の極短オペラであり、真ん中からフィルムを逆回しするかのように時間が逆に進行してもとに戻って終わるという実験的な作品であるということを知りました。長木氏のユーモアを交えた解説によると、「中身が濃くてテンポが早くて、1分眠ってしまうとふつうのオペラで10~20分寝たことに等しいから、眠らないで聴いて下さい。」ということでした。さて始まってみると、あれよあれよというまに終わり、眠くなる暇もありませんでした。うーん、たしかに実験的な作品です、とくに感動というものはありませんでした。

引き続いて、指揮者中川賢一氏による、プログラム後半の曲、マイケル・ナイマンの「妻を帽子と間違えた男」の紹介トークがありました。題名からしてシュールな奇怪な内容だろうかと思っていたら、まったく違って、ヒューマンな物語ということです。中川氏はこの曲のあちこちにちりばめられているというシューマンの歌曲などの引用をピアノを使いながら次々と熱心に解説してくれて、おもしろい紹介トークでした。

このあと、休憩をはさんで、いよいよ「妻を帽子と間違えた男」。世界的に有名な声楽家で音楽大学でも教えているP教授が高次脳機能障害となってしまい、歌は完璧に歌えるが、日常生活の中でのあたりまえの物事を目で見て理解できない(目に障害はないのだが、見た物の全体を統合して意味ある情報にすることができないため、慣れ知ったはずの人物や、バラの花など、普通ならすぐにわかるものが、それと認識できない)という設定。登場人物はP教授と、病状を究明しようとする熱心な神経科医S博士と、P教授の妻と、わずか3人。S博士は、診断に熱心なだけでなく、P教授のためになるような助言をしようとする姿勢がヒューマンです。そしてP教授の妻の、病気を認めたくないという気持ちと、でも根底では病気のことがわかっていて日常生活で献身的に支えている姿勢にも、共感できます。(この原作はノンフィクションで、「レナードの朝」の原作者が書いたということです。言われてみればなるほど、レナードの朝と同じ土俵の話です。)

そしてそれらをあますことなく表現するナイマンの音楽が、説得力があります!ナイマンの音楽に良く出てくるズンズンドンドンというロック調ののりの良いところもあれば、叙情的な美しいアリアもありました。特に前半部分での主人公P教授のしみじみとしたアリアや、後半でのS博士と教授の妻との二重唱は、聴き応えがあり感動しました。ナイマンの音楽が、これほど良いとは思いませんでした。3人の歌手とも、味があって良かったです。(5日のキャストは、P教授・今尾滋、P教授夫人・見角悠代、S博士・羽山晃生。)

ナイマンの器楽の編成は、弦楽器5人(2Vn,Va,2Vc)、ハープ、ピアノ、の総勢7人。舞台の下手1/3ほどに器楽奏者が並び、指揮者がその前に陣取り、劇の進行は舞台の中央~上手で行われました。PAも使うという説明があり,舞台の両脇に巨大なスピーカーが2本ずつたっていましたが、僕の席からは、演奏の間、スピーカーを使っていることを感じさせない、自然な使い方でした。

ところで「往きと復り」と「妻を帽子と間違えた男」の共通点は、医師が登場することでした。今夜の演出は、この共通点を強調して、2作とも、白衣姿のインターン数人の集団を舞台上にほぼ終始登場させ、無言で様々な動作を演じさせていました。しかし狭い舞台に人がごちゃごちゃといるために、ヒンデミットでは筋の展開を余計に追いにくくなった感がありました。ナイマンでも、3人の登場人物の演技と歌唱だけで充分に濃密な演劇性があるので、このインターン集団は、かえって舞台空間の緊張性を妨げるような、無用の長物に感じました。

東京室内歌劇場の公演は、今年2月にリゲティの「グラン・マカーブル」を聴いたのが初めてで、すごく良かったので、今回ふたたび来てみました。意欲的な曲目、高い演奏水準、わかりやすいトークつきと、前回と同様、満足度充分の公演でした。





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Last updated  2009.09.08 02:12:05
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