この歯には辺縁隆線から隣接面にかけてクラックがあり、
内部の象牙質には虫歯ができています。
この虫歯を削って治療するつもりは全くありませんので、
せいぜい飲食後の重曹水によるpHコントロールで経過観察中です。
虫歯の穴の中にはいわゆるラクトバチラスという虫歯菌がうじゃうじゃ住んでいると
思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
虫歯内部のドロドロに溶けた歯質を顕微鏡で見てみると、
細菌が住んでいるケースの方が少ないのです。
全然居ないわけではないのですが、思ったより少ないね。。という印象です。
では、なぜ歯は溶けるのか?
クラック外部と内部の酸素濃度差による「すきま腐食」と
象牙質とエナメル質のイオン化傾向の差による「異種金属接触腐食」が主な原因となっており、
この症例の場合、細菌による「微生物腐食」は従です。
「微生物腐食」は完全には解明されていない腐食形態で、
分かっているものもけっこう機序が複雑なのですが、
基本は酸化:電子を奪うということなので、
酸:水素イオンが必ずしも必要ではないのです。
要するに、虫歯=酸で溶けるというのは、誤りではないのですが、全てではないのです。
そのうちご紹介いたします。というか、以前一部だけアップしています。