カテゴリ:今日の抜歯再植術シリーズ
70代女性、左上6、歯根破折、口臭++
反対側には義歯が入っていて、この歯の負担が重い。 やはり破折したかという思いだ。 この歯を諦めると、次々にドミノ倒しのように歯が失われていく、やはりここで踏ん張るしかないかと思った。 前回のつづき https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202210090000/ 破折歯を見るといつも絶望的になる。 この歯は神経を取って、取った後の根菅に根管充填材を詰めてあるのだが、ピンクの根性材の周りが真っ黒になっているのを見るとまず絶望する。 この黒色物質は硫酸塩還元細菌の代謝産物の硫化鉄(FeS)で、根管内はこの細菌が繁殖していたということを表す。 根管治療の教科書的には細菌が繁殖しないように、根管内の有機物をファイリングで完全にこそぎ落として綺麗にして、薬剤で消毒し、乾燥し、根管充填材で緊密に充填する。ということにはなっているが、現実はそう上手くはいかない。 根管内部が黒くなっていない歯が非常に稀だという現実から、教科書に書かれていることは絵に描いた餅、実際には実現困難な妄想にすぎないという厳然たる事実がある。 ラバーダムをしても同じようなものだ。ちょっとはマシかなという程度だ。汚い手袋で巻いた綿栓とか、どうなんだろう。 では、どうすれば良いのか? 最初から神経を取ろうなんていう考えは捨ててしまうことだ。 どうせ99%上手くいかないのだから。 もう1つの絶望は根管治療の不備に基づくものではあるのだが、膿瘍形成の存在だ。 膿瘍は免疫系が細菌等の異物と戦いそれを排除しようとして形成するものなのだが、 元々そんなものがある方がおかしいということだ。 今回の症例では歯根分岐部に大きな膿瘍があり、この原因は根管充填材を詰める前に根管をファイリングで拡大する過程で、側壁に穴を開けてしまったことにある。これは根管治療中に良くある事故なんだが、誰でもやってしまう。真面目に根管治療に取り組む歯科医ほどやってしまうというオチまでついている。 膿瘍は根尖にもあり、これはこの部分に細菌が取り付いており、これを排除しようとしていたことを表している。排除しようとして根尖口付近がすり鉢状に吸収されてもいる。 これは根尖まで綺麗に根管充填できてはいないので、根尖付近はやはり細菌の生息場所になっているということだ。 神経を取った歯根というものは概ねこのようなもので、免疫系は歯根そのものを異物として扱っているようにも見える。それでも厄介なことに10年も20年も自覚症状が現れないことが多いのだ。これは歯医者にとってはありがたいことで、その間にどこの歯医者で神経を取られたのかも忘れてしまうことも多いのだ。自覚症状が出た時には抜歯となることも多いのだが、誰も責任は取らない。 やはり神経など取らないのが最も良いというだけのことだ。またそれは簡単なことだ。 時系列で膿瘍や根管の様子をアップしていくので、よく見て欲しい。 合わせてみた 膿瘍を除去してみた 根管充填など無駄だということがよく分かると思う。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/10/10 10:58:17 PM
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