カテゴリ:今日の抜歯再植術シリーズ
50代女性、右上6、歯根破折、咬合性外傷
前回のつづき https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202407220000/ 前回はこのような状況に追い込まれる経過をシミュレートしてみた。根底には咬合性外傷があって、安易な歯科治療を繰り返してきた結果だと思う。この患者は歯科医師から見たらお得意様と言うか、自費の治療を勧めるがままに受け入れてきたのだろう。口腔内は自費の治療が多い。 それはともかく僕としてはどうにかしてあげるしかないので、メタルボンド冠とメタルポストを除去する作業に取り掛かった。内部がどうなっているかの確認をして再植に備えようと思う。 口蓋根が割れているように見える ポーセレンクラウンを除去すると立派なメタルポストが現れた。 黒くなっている部分は硫酸塩還元細菌が生息できる程度の隙間ができていたと言うことだ。スーパーボンドでも必ず脱離はする。なぜならアンダーカットのないスムーズなメタルコアの表面を見れば分かると思う。 スムーズだとクラウンの製作は容易で適合性も優れるが脱離しやすい。 ここに口腔外で修復物を作る上での大きな矛盾がある。しかし歯医者は誰も気にしていない。 なぜなら口腔内で自分で歯を作れないので、型取りして外注することしか頭にない、クソ下手だからだ。 と言うかこれが当たり前だと思い込むことで、デメリットのことは考えないようにしている。 僕も技工士上がりなので、技工作業が完璧ならトラブルは起こらないと考えていた時期もあったが、高齢化の時代を目の当たりにするとそんなことは虚しい幻想にしか過ぎないことがわかった。 昔書いた「90歳のおじいさん」という記事を参照して欲しい。 https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/200609150001/ 口蓋側からポストをカットしている 頬側根のポストはとっくの昔にセメントが脱離して内部はドロドロだった。ほとんどの歯科治療はこの程度だと思っても良い。自費にして手をかければ良いと言うものでもない。咬合性外傷があると何をしても限界がある。と言うか虚しい。 メタルコアの下には細菌の丸いコロニーがいくつも見える。 頬側のコアを除去した。もちろんセメントは効いていない。ユルユルだ。 口蓋根のポストの接着も当然ながら剥がれている。多分だが、根管形成バーで歯根分岐部に穴を開けている。パフォレーションという治療中の事故なのだが、そのときには気が付かないことも多い。こんなことは日常茶飯事だ。歯科治療というものもそれなりのリスクが伴う。 白い部分は象牙質の脱灰が進んでいるので除去しようと思う。 クラウンやメタルポストの内面も細菌の代謝産物である黒い硫化鉄(FeS)がこびりついている。とっくの昔にこの治療は破綻していたことがわかる。 歯科治療の虚しさを痛感する。 咬合性外傷をなくし、歯科治療はCR充填に留め、それ以上は何もしないことが最も良いのだが。。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/07/24 12:48:23 PM
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