ロシアのウクライナ侵攻から2年 下
民主主義対専制主義、これもこの間よく聞かされてきたフレーズです。ウクライナの現代史に詳しい人からすれば、?です。米国と英国の基本政策は、ロシアの弱体化とそれによる経済支配、資源収奪でしょう。なかなか言うことをきかないプーチンを痛めつけたいということでしょう。東欧の旧社会主義国はだいたい落しEU,NATOに取り込んだので、今度の標的はベラルーシとウクライナです。今回のロシアの進攻の引き金になったのは、2014年のマイダン革命でしょう。その本質は、民主革命というよりは、裏で米国が動いたクーデターでした。曲がりなりにも選挙で選ばれた政権が、暴力で倒されたのです。大統領のヤヌコービッチはベラルーシに亡命しましたが、その支持基盤の地域=ドンバスは内戦状態です。プーチンがネオナチと呼ぶ極右の民兵組織アゾフ大隊が最近まで暴力の限りを尽くしました。国連は8年間で15000人が死亡としています。ドイツやフランスの仲介でミンスク合意が成立して停戦・小康状態でしたが、ゼレンスキーが無効を宣言するに至って崩壊です。被害者意識のあるロシアが、身構えるのも当然でしょう。ウクライナ利権のバイデンが何とかしてくれると思っていたのでしょうが、そうはならず代理戦争です。英米から見れば優柔不断だったドイツは、米国・ノルウェーによってノルドストリームを破壊されて、ロシアからのガス供給を断念し戦争支援に大きく舵を切らざるを得ませんでした。開戦から2年、この間この戦争で得をしたのは誰かを考えると、この戦争の本質が見えてくるのではないでしょうか。ロシアは?石油が高止まりしましたがインドや中国に買いたたかれ、ノルドストリームが破壊されて欧州への天然ガス販売は大幅減少です。40~70万人死傷と兵力が大きく損なわれました。占領地は増えても、復興コストの負担が残ります。70兆円と言われる在外資産は凍結されたままで、海外からの新規投資も望めません。戦時経済体制でGDPはプラス転換ですが、ルーブルは徐々に下落です。兵器の半導体も、民生用の欧米日本品を転用です。国力は大きく弱体化しました。ウクライナは、3.1万人も兵士が死に国土が疲弊しています。復興には70兆円を要するとの試算もあります。終わりの見えない戦いに徴兵逃れも出る始末です。腐敗ランクは140位とロシアほどではないにしても、ひどいものです。米国は多額の武器援助を行っていますが、これにより国内の兵器産業は在庫一掃、増産体制です。このへんは、欧州の兵器産業も同じですが規模が違います。原油価格も上がり、天然ガスもロシアに代わって販売です。派兵しないので兵士の戦傷もありません。ただし米国全体ではなく、一部の利権者が大儲けしていると理解すべきでしょう。まさに、対岸の火事ですね。一般国民にとって何もよいことがないウクライナですが、ゼレンスキー政権はなかなか停戦に踏み切る気がないですね。戦時ということで選挙もやらず、人気のある軍司令官を解任です。勝てない戦争を無理に行い、敗北が決定的なのに降伏せず沖縄や首都を犠牲にして国体を守ろうとした天皇を想起させます。日本の敗戦に学んでほしいです。吉田茂のように戦で負けても外交で勝つという手もあります。もう少し続けます。