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カテゴリ:群馬県
おセンチな気分で前橋を後にしましたがまだ高崎で寄っておきたい酒場があります。先ほどの前橋「つくし」は多くの文献に依っていますが、この高崎の町で訪れるべき店は、正直に言えば酒場放浪記で見たから行こうと決めていたのでした。とは言え、その放映内容が鮮明に記憶されるほどのトキメキを放っていたわけではなく、ただもう義務的に行ってみようと思っただけなのでした。目指す酒場は、慌てて調べなおしてみると北高崎駅から向かうのが近いようですが、この時間になると列車の運行本数もぐっと本数を減らしています。賭けのようなものですが思い切って路線バスを使うことにしました。ちなみにS氏はかつて全く同じコースを辿り両店とも定休で空振るという無念を噛み締めているので、表情からは明らかに見て取れぬもののなんとしても訪れるという執念はぼくなど遥かに凌駕しているはずです。
さて駅前で路線バス乗り場をチェックすると高崎の呑み屋街に向かうバス乗り場には、すでに客を乗せて今しも発射寸前という様子です。すでに40000歩を越えてさすがにくたびれていますが、これに乗り遅れるともお縁はないかもしれぬと思うと思わず駆け寄ってしまいます。その姿を認めてくれたのか、何とか車内に転げ込むようにして乗り込むとすぐさまドアは閉められたのでした。ようようのことで目指す酒場に近いらしいバス停で下車しますが、周囲は街灯すらまばらにしかない住宅街でチラホラ飲食店もあるにはあるのですが、当の店は一向に見当たりません。とても酒場がありそうにもない路地に入り込むとかつては艶っぽい店があったのではないかと想像されるちょっと開けた場所があり、ふと蔦の絡まる店舗に見覚えがありー前橋の「つくし」も蔦が生い茂っていましたー、覗き込むとたまたま顔を出した店主にいらっしゃいと出迎えていただけました。 「三月兎」というお店です。テレビで見る限りでは建物こそ味わいがあるものの、店内はシックな日本酒バーとしか感じられなかったものですが、実際に店に収まってみるとさすが昭和59年開店というだけの落ち着きがあります。この心地よさを求めてか、お客さんもほぼカウンター一杯に入っていて、飲食後のマッタリしたひと時を最後の一杯を傾けながら過ごしているようです。どうやら店のピークは過ぎており、ご主人は店じまいのタイミングを見極めようと表を見に現れたのかもしれません。テレビではどうだったか記憶が定かではありませんが、お喋りしてみると大変饒舌で愉快な方で、この界隈の昔話では留まることなくお話下さり興味深い情報もありましたが、ここでは割愛。何やら日本酒を数杯、肴も簡単なものだけお願いしたのですが、何より主人の人間性が際立ってしまいあまり印象に残らなかったのでした。終電も迫っていると勘定をお願いするとわざわざカウンターから出て外まで見送っていただきました。高崎までなら歩いて25分位だと仰るので礼を述べて駅に向かって歩き出すのでした。 さて、呑み屋街を抜けるとやがて今朝がた散策したアーケード街に至ります。軽く酔も回ってきたのか、案外近く感じられます。この通りは人通りはあまりないものの案外多くの飲食店がまだ営業しています。でもあまり悠長に構えていては終電を逃してしまいます。駅に向けて目抜き通りを進むと駅からそう離れていない所に酒場の数軒並ぶ一角がありました。その一軒がいい具合に枯れていてガラス越しに見える店内の様子が高崎で見掛けた酒場でもっとも魅力的に感じられたとあっては見過ごすわけには行きません。最終電車まであと30分あります。2杯ほどは呑めるでしょう。 「やきとり ささき」は、コの字カウンターだけのお店で、主人は若くて賑やかな方でした。もつ焼数本とサワーを頂きます。お客さんは入れ替わり立ち代わり途切れることなくなかなかの人気店であることが感じられます。結論から言うといい店ですが、あまりにも店主が押し出しが強くて正直や)辟易したのでした。それが楽しい方には、それこそがこの店の魅力となりえているようなので、あくまで一個人の感想として受け止めていただきたいと思いますが、疲れ果てた末にたどり着いたぼくにはやや疎ましく感じられました。 そんな訳でさほど後ろ髪を引かれるまでもなく店を後にし、大急ぎで上野行きの最終列車に飛び乗ったのでした。もちろん車内で呑む酒も買い込みましたが、今回も存在が希薄だった同行者は腰掛けた途端に眠りに落ちて、ひとり黙々とほとんど見えぬ車窓風景を眺めて呑むだけです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/11/24 08:33:41 AM
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