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カテゴリ:近畿地方
大阪での宿泊は値段を再優先して萩ノ茶屋界隈ー所謂釜ヶ崎ですね、言わずとしれた日本三大ドヤ街のひとつで、事実上山谷が外国人観光客が優勢となってからは寿町とここが往時の面影を残していると思われ、二大ドヤ街と言ったほうが良いかもしれませんーにある一泊1,500円のホテルでした。結論から言うと簡易シャワーやトイレにやや難があるものの総じて綺麗で危なくもなんともないので、今後の大阪滞在には積極活用しようと思いました。一応責任は負えませんのでそこは自己責任でご利用をご検討ください。 さて、翌朝5時過ぎには喉の異様な乾きで目覚めてしまい、のんびり身支度しましたが、ダラダラしているほどの時間は残されていません。同行するKさんも既に出発の準備が整っているようです。この日は別行動です。Kさんは神戸観光、ぼくは大阪の喫茶と酒場を巡るつもりです。それじゃあ、飛田の方を通り抜けて天王寺に向かいそこで夕方の新幹線までは自由行動とすることにしました。 飛田の商店街を歩いているとあるはあるは喫茶店が次から次へと姿を表します。この商店街にはかつて飛田東映という劇場に映画を見に行ったことがあります。普段は気の強さと怖いもの知らずを自ら標榜していたような女性でありましたが、やさぐれた日雇いのオヤジたちの険し意視線に終始怯えて映画にも身が入らないことが映画館の暗がりからも見て取れて滑稽だったことを今でもありありと思い出せます。そんな劇場からも程近い所にかほどに多くの喫茶店があったとは。「音楽喫茶 ニュープリンス」が界隈ではオオバコのようなので朝食がてら入ることにしました。店内に入ると造りが和歌山のあの「ヒスイ」にそっくりなことに驚かされます。奥深く伸びる客席と並行に半地下構造の同じテーブル配置の空間が広がります。ただ違っているのがそのゴージャスでありながらもどこかしら愛嬌のある「ヒスイ」にはあったセンスであり、こちらは不思議な位に味気ない大学の学食のような素っ気なさでそこら辺に独特の魅力を感じなくもないのですがやはりぐっと落ちるのは否めません。 飛田遊郭を通り抜け、天王寺駅前でK氏と別れると一人向かうは「純喫茶 スワン 阿倍野店」でした。立派なビルがまるごとこの喫茶店のようで、単調な景色の一階は避け二階に上ったもののやはりさほど愉快な何かがあるわけでもなく、まあ使い勝手はいいのでしょうが純喫茶好きを喜ばすものといえばせいぜいが二階へと上がる螺旋階段くらいのもの。ストローを始めとした店オリジナルのグッズが辛うじて心を和ませてくれるのでした。 天王寺からひたすら南に向かって歩きます。ぐるりぐるりと寄り道しつつ歩いているうちに阪堺電気軌道上町線の松虫停留所に到着していました。この停留所には聞き覚えがあります。この界隈には多くの喫茶店があるはずです。急激に疲れを感じたのでこの界隈の喫茶店をハシゴして休息を取ることにしましょう。何軒かの喫茶店が閉店していたり改装中だったりして、期待外れだなんて思っていたところに「喫茶 軽食 ゆうなぎ」が姿を表したものだからーって停留所のすぐそばにあったのだけどー、これは興奮しない方がどうかしているというものです。ゆうなぎという店名がそのまま店の印象を的確に表しているようで、夕闇の深い静寂にくるまれたかのような感覚に見舞われます。日の沈むまでのほんのわずかな無風状態を永遠にそのままの状態で留めておきたいという店主の欲望は、純喫茶という独特の文化が獲得してきた幾多あるイコンから最良のものをまとわせることで、不気味さすら感じさせ達成されています。ジョゼフ・ロージー監督による「夕なぎ」が立ち直れなくなりそうなほどの怪しさを湛えていたのと似た、危なさを感じました。ここにあまり深く囚われてしまうと立ち上がれなくなるやもしれぬ、そんな不安に駆られ逃げるように店を出たのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/08/02 10:27:14 AM
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