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カテゴリ:神奈川県
JRの御殿場線は都心からも比較的足を運びやすいし、実際何度かは乗り通したことはあるのですが、下車することはないままにオッサンになってしまいました。でもオッサンになったからこそその良さを知るというものもあるのですよね。なんて言い訳を挟みつつ御殿場線の乗客になるのでした。このためだけに御殿場線に乗車するのではないところがぼくのセコさの表明のようで、後ろめたさよりも己の恥部を晒すようでなんだか切ないのですが、これも己の真実の姿なのだからあえてここに顕にすることを厭わぬのです。さて、下曽我についてでありますが、多くの方がそれは一体どこなのだと問うてみたくなるはずです。実はここは住みたい町だったり、とにかく評判がよろしくて、その自負もあるのか鼻持ちならぬ印象のある神奈川県なのであります。東海道線の国府津駅からわずか一駅ーだったかなーというのに、到着した下曽我駅前は、ここが神奈川県かと目を疑いたくなるほどに田舎びています。いや、神奈川県でも内陸部はこんな風景が紛れているとは思いますが、かつて東海道を走る国鉄の幹線として活躍した路線の町としては、いかにも鄙びています。町を歩いてみても何軒かの和菓子屋とか酒屋、生花店がある程度です。居酒屋さんも数軒ありますがやってるんだかどうなのか。そういえば沿線では何度か「松ちゃん」という焼鳥店を見かけましたがこの町にもありました。駅前には「グリーンハウス」なる喫茶店店舗もありますがこちらも営業してるのか。駅の向こうには住宅があるばかりで、不気味なミイラのような女性の像が飾られていますが、夜中だとおっかないだろうなあ。 さて、向かうのは「平野屋」でした。思わず見惚れるほどの見事な木造家屋です。かつての宿場町の風情を留める観光名所はあちこちにあって、それなりに訪ねてはいますが、その多くが必要以上の改修をされているためか、家屋自体がどうぞ皆さん歴史があってもなお美しい私の姿を見てくださいと誇らしげにあるのがどうも違う気がする。経年劣化しつつも個人ができる限りの補修を重ねてなんとか人様に晒せる程度を保ってきた、そして実用にも供してきた、そんな健気さすら感じさせるこの木造店舗をひと目で好きになりました。片やハリウッド女優だとすればこちらはピンク映画、いやブルーフィルムの名もない女優さんたちのようなものでしょうか。さて、店内も素晴らしい造作なので、家具が新しいものだとしても視線を逸らし視界に入れなければ気になりません。南京豆でビールを呑みながらのんびりとカツ丼の到着を待ちます。開花丼というのも気になるし、ラーメンも食べてみたい。唯一、いかにも酒の肴のもつ煮込みも注文の言葉も出かかりましたがグッと飲み込みました。うっかり頼みすぎても食べ切れやしない。お客さんは初めは近所のご高齢の夫婦だけでしたが、続いて工事関係者らしき二人組、続いて背広を着たサラリーマンがばらばらに2名来られてにわかに店は大繁盛となります。便所をお借りしてみたいところでしたが、ご迷惑と思い遠慮しました。店は古くとも今でも町の数少ない食堂としてなくてはならぬ存在のようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017/01/24 08:30:05 AM
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