|
カテゴリ:渋谷区
恵比寿という町は、嫌いな町じゃないんですよね。というかむしろ住むならここもありと思っていたのだけれど、予算がそれを許さないだけの話なのです。いやいや、具体的に恵比寿での生活を思い描いていたわけじゃありません。だって、実際住むとなれば近隣の商業業施設やら医療機関なんてものも想定すべきであるし、そこまでのリサーチを実際に行うかといえば、まあそうする可能性は相当低いに違いないのです。想像の範囲内で恵比寿住民である自分を思い描く程度の憧れのような妄想に過ぎぬのです。じゃあ恵比寿のどこに惹かれて住んでみたいなんて戯言を語ってみせたのか。まず第一に挙げるべきは公共交通機関な利便性があります。その意味では東京駅のそばというもの候補として浮上するのであるけれど、これは話が長くなるのでやめにしておきます。次には散歩して楽しそうだというのも恵比寿の魅力と言って良さそうです。周辺の数多の人気の町へのアクセスも良いのはやり魅力的です。なのに当の恵比寿自体は案外閑静なのだから住環境は悪くないと思われるのだ。なんて事をボンヤリ思いながら呑んでみたのです。
一軒目は、「やきとり かおる」であります。恵比寿神社の周辺にはさして広くないけれどしんみりとした情緒のある呑み屋街が構成されていて、そこには以前何度か通って忘れられぬ割に再訪の機会を逸している何軒かの良店があります。この夜訪れるのは、そんな恵比寿神社の目と鼻の先にあるそうな。さも風情があるのだろうとさして歩くでもなく辿り着いたそこは暗い通りではあったけれどさして情緒のない眺めであるし、店そのものも質素なところは好感が持てるけれど、味気のなさは否めぬところであります。外観から予想される通りのやはり拍子抜けする位にありふれたお店です。改装を経ていると思われるのだけれど元も似たような構えであっただろうと思われる。焼鳥のお店らしいからまずは焼鳥を焼いてもらうことにします。高齢の方は初代なのだろうか。腰を丸めて寡黙に作業に没頭しています。若主人は客の幼馴染の女性と砕けた会話を交わしています。近所の仲間たちのことや町の変貌について、さしてしみじみとした感じもなく開けっぴろげで陽気に語られていました。恵比寿育ちの方たちは、ざっくばらんとしておられるようです。お隣の方は引退後に静岡に移り住まれて時折、都内を訪れて夜には決まってこのお店に来られると語っておられました。焼鳥もいいけど、この店の真価はむしろ店の方や常連さんたちとの語らいによって保たれているのだと感じ入りました。 次なる酒場は、「酒処 ふくみ」です。地下の階段を降りて行くと店内にも階段があってその高低差が生み出す景色はなかなかに愉快です。手持無沙汰になりがちな独り呑み客にとっては、それは嬉しいのですがカウンター席からは周囲を眺められないのが残念。目の前の大皿に盛られた肴たちをひとしきり物色すると後は人のいないカウンター奥の壁を眺めるしかないのです。そんな大皿から親子煮を注文してみました。やがて差し出されたのはとんでもない量の親子煮で、しかも辛めの味付けがされているので酒が進むこと進むこと。辺りを見渡してみると独り客はぼくだけで皆さん、結構な大人数で盛大かつ賑やかしく楽しい酒を召し上がっています。確かにこのお店は奥にも深く伸びていて、それなりのグループで使うのがよさそうです。というか、カウンター席には店の方の私物などが置き放たれていて、ぼくのような独り客は稀有な存在なのかもしれないですね。仲間の少ないぼくのような人間にはちょっぴり不向きで、ほんのわずかではありますが、そんな己の境遇を切なく感じもするのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018/01/10 08:30:05 AM
コメント(0) | コメントを書く
[渋谷区] カテゴリの最新記事
|