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カテゴリ:神奈川県
ぼくは温泉街の情緒を否定するものではないし、むしろ昼間の温泉街を散策するのはおおいに好むところであります。しかしそれも余りに混み合っているのもいやだし、かと言って人っ子一人ともすれ違わぬようなのも、どうかなあと思うのです。夜の温泉街は、風情はあるけれど宿を出て夜遊びできるようなところも少なくなっているようで、その点では先般訪れた水上などは寂れきって見えたがまだしもマシなのかもしれません。さて、時刻は夕暮れ過ぎ、随分久しぶりになるロマンスカーからの車窓を眺めるのも束の間、呆気なく箱根湯本駅に到着してしまいました。いかなる理由で箱根に来ることになったか、その仔細は例の如くにここでは述べぬことにします。宿で荷を解くと夕食まで残された時間は一時間少々しかありません。坂道を大急ぎで駆け下りると温泉街は思ったより近い。まずは箱根湯本で最もよく知られる純喫茶を訪ねることにしました。
駅からすぐの「マイアミ」は、古風な胸焼けを起こしそうな濃密な空間であるのかと思い期待して赴いた訳でありますが、その実態は確かにクラシカルではあるけれど、確かに純喫茶らしい意匠は纏っているけれど、しかしぼくには何ら感銘をもたらさなかったのでした。そう悪しざまに書くと悪いかなあ。別にここが格別悪いお店とか言うつもりはない。駅チカで町行く人も良く見えるし、そのためもあってか実に多くのお客さんがおられるのです。この写真を撮る直前までびっしりと日帰り入浴客なのか、満足そうでありながらも少し疲労の滲む表情で埋め尽くされていたのです。そして、まさにこの美徳がそのままこの店をぼくにとっての魅力を損なう理由となるのだからお店からしてみるとえらい迷惑な事であります。やはり古い喫茶はひっそりと秘密めいていて欲しいと願うのは好事家の身勝手で切実な願いなのです。 そんな箱根の目抜き通りをさらに進むと「画廊喫茶 ユトリロ」があります。ユトリロについて嬉々として語るほどの知識も趣味もないから、店内に入って開放的で明るいことを確認すると、あゝナルホドねと頷いてみせてそのまま立ち去りたい気になるのですが、まあそういう無体な事はできまいて。壁にはユトリロの筆になると思しき絵画が展示されているが、店主は余程この名こそ知れども格別知名度が高いとは思われぬ画家に相当な思い入れがあるらしいのです。程々に名の知れた画家の絵画は一過性の麻疹のようにかぶれる事はあるけれど熱が冷めると途端にかつての思い入れそのものが恥ずかしくなって、そんな麻疹状態の自分があった事など消し去ってみたくなるものです。という事はここを営む方はそんな生半可な趣味人ではな位ということになるのでしょうか。そんな事を思いながら、月替り、それが困難なら季節ごとにコンセプトとともに店名や店の印象を変えてみてはどうたろうか。強ち無理ではないと思うし、お客さんも楽しくはないだろうか。と、この天井が高く広々としたある意味で美術館とかサロンのようなスペースはもっと活かしようがあると思うのでした。 駅前には「喫茶室 ルノアール 箱根湯本駅前店」がありました。箱根登山鉄道の往来も眺められる旅の始まり、もしくは締め括りにはとても使い勝手が良さそうですが、今回はパスします。 「喫茶 浅乃」も目抜き通りに面してあるお店で店内が表から筒抜けています。のっぺりと平凡だけれど案外悪くないムートですが、時間もないのでここは素通りします。宿題店には、ウ~ン、そこまでではないだろうな。
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Last updated
2019/01/13 08:30:07 AM
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