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カテゴリ:台東区
改めて訪れてみると上野公園というのはなかなかに興味深い歴史を辿って来たし、そこに設けられた多くの文化施設などにも個別の物語が付随しているのですが、それらについて語ることは本稿の目指すところではありません。短くはないけれど、必ずしも大昔からの歴史が上野公園にはあるわけでもなく、表面的なストーリーはすでに多くの文献なり資料から辿ることができます。しかしながらぼくには上野公園にはその表向きの歴史では収まりきらぬ、もっと禍々しい秘密がるように思えてならぬのです。その根拠はどこにあるのかを問われると明確に答えるような準備などそもそもありはしないのですが、どうしても上野公園には闇の一面を想像させる何かがあるように思えるのです。それは昼間の喧噪に比して夜間の静寂の差異の極端さがもたらす光と影の喩の効果故の気の迷いに過ぎないのかもしれませんし、実際にそうであればいいと思ってもいますが、遠からず、この地で何事かとてつもない災いが生じるという懸念を払しょくできずにいるのでした。だからこんなぼくにとっても禍々しい場所で呑むというのは実に危険な振る舞いなのかもしれません。これ程にぼくが怯えているにも関わらず、公園内を行き来する人々の表情はどれをとっても穏やかに映るのでありましてその穏やかさを装った無表情さがさらにぼくを脅かすのでした。
とまあ、かなり大袈裟ではありますが、実際にぼくは上野公園がどうも苦手でありまして、訪れたのはもう10年ぶりくらいになるかもしれません。北千住「明日香」、六本木「淡悦」、六本木「淡悦」といった姉妹店を持つ明治8年創業の老舗料理屋の「韻松亭」でご馳走になれるとなると多少苦手であることぐらいはさておいて馳せ参じることにしたのです。この老舗までの道のりはかつて記憶した暗さこそかなり弱まった気はします。風雅な構えの和風建築がずっと気になっていたものの前段の理由からこれまでお邪魔する機会がありませんでした。店内に入ると随分と垢抜けた風に改装されていたりして思っていたのとはちょっと違ってその意味では心の平穏は保てました。まあ日本家屋などというのは余程に特徴的な様式を採用しているとか奇人めいた建築家が建てたとか、恐ろしく豪奢なものであったりしなければ、綺麗に手入れされていさえすればそうそう変わるものではないのでしょう。なので建築ウォッチングにもすぐさま見切りをつけて後は呑んで食べるだけであります。さて、グルメウォッチャーであればずらり出てきた料理の一品一品を紹介しつつ論評すべきところでしょうが、そもそもグルメならざるぼくはただ美味しいなあを繰り返すばかりなのです。どれもちゃんと美味しかったのですが、あえて苦言を呈すとすればどれも等しくなだらかに美味しいだけでどれが一品が飛び抜けているとかいったメリハリがなくて印象がぼやけてしまうことです。日本料理っていうのはそんなものだと諭されればああそうなんだと納得してしまいそうですが、きっとぼくはそれでも物足りないという気分が残ってしまいそうなのです。一般的な懐石料理のコースを頂きましたがご飯はさすがに手を付ける程度で満腹してしまったところお土産に持たせて頂きました。結局のところ翌朝目覚めてから猛烈な空腹で頂いたこれが最も美味しく頂けました。米も強くなかったしですしね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/09/12 08:30:06 AM
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