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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:スウェーデン映画
原作は、まさに映画向けなサスペンス。 第3部まですでに映画化が決定していて、ハリウッドではデヴィッド・フィンチャーによるリメイクも控えているそうだ。 全世界にセンセーションを巻き起こした話題のミステリーは、映画になるとさらに暗くて陰鬱で、いがいと地味。そこがまたいいんだけれど。 作品に流れる暗さは、お国柄といえそう。寒冷地特有のグレーな背景は、いつものことながら、とても身近でこのましいものだった。 雑誌『ミレニアム』の発行責任者で社会派ジャーナリストのミカエルと、辛い過去から社会を拒絶して生きる天才ハッカーのリスベットが手を組み、孤島に暮らす大企業の経営者一族を巡る、血塗られた謎に迫っていく――――。 物語の根には、男によって虐げられてきた女の性、権力者のエゴ、作者自身もそうであるジャーナリストによるジャーナリズムの在り方、などがある。 複雑な社会問題を、リスベットの過去に絡めてミステリーに仕上げた、スティーグ・ラーソンの見事な小説が、2時間半にうまく纏まっていた。 キャシャな体と、無数のタトゥー、誰にも心を開かない、ハッカーのリスベット。 彼女の過去は2部と3部で明らかにされていくのだけど、ミカエルにだけは弱みを見せ そうになる・・・ふたりに微妙な関係が築かれる第1部。 原作では、脅威的な女性遍歴をみせるミカエルだが、映画ではそこを割愛していてやや安堵した(笑) ふたりの関係が、馴れあいにならないのは原作どおり。 しかし、ハリウッドのリメイクでは、どうなることやら、、、。きっと、あんなことやこんなことになるだろう。 どこかですでに見覚えありそうなサスペンスでも、惹かれるのはヨーロッパ独特の魅力があるから。 間合い、暗さ、民族的な背景から滲み出るニュアンス。どんなに地味でも、飽きがこない底力がある。 情報提供者に嵌められ、名誉棄損の有罪判決を受けたばかりのミカエルは、大財閥の前会長ヘンリック・ヴァンゲルから、ある依頼を受ける。 40年前、ヘーデスタの沖合に浮かぶヘーデビー島で、16歳の姪ハリエットが忽然と姿を消した迷宮入り事件を、改めて調査してほしい―――というのだ。 心身ともに疲労していたミカエルは、ヘーデスタ行きを決意。懲役を受けるまでの期間、調査に協力することを約束する。 何年もかけて行われた捜索に、再度挑むことになったミカエルは、何者かの妨害や、行き詰まりを乗り越えながら、真実に迫っていく。 そこに、ヘンリックの依頼で秘かにミカエルの身辺調査を行っていたリサーチャーのリスベットが、好奇心としか言いようのない感情で近づき、協力していくことになるのだった。 地道な調査で徐々に新事実が現れ、経営者一族を揺るがす失踪事件の謎が明らかにされていく。 ハリエットの残したメモが導く、過去の残忍な少女連続殺人事件との繋がりとは――? 結末はわかっていても、犯人の狂気や異常心理にぞっとなる良作。 ヘーデスタが寒々として、閉鎖的であるからこそ重苦しい空気が、ずっと漂う。 さりげなく引かれたサランデルに関する伏線は、第2部へと続く。彼女の外見、内面ともに、どんなふうに変わっていくのかが楽しみ。 次作では、国家権力が絡み、公安警察も登場して、物語がグンとスケールアップするはずだ。 余談だが、原作のミカエルのすけこましぶりに、ツッコミをいれたくなるのは、わたしだけなのか否か。 † † † 監督/ ニールス・アルデン・オプレヴ 原作/ スティーグ・ラーソン 『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』 脚本/ ニコライ・アーセル ラスマス・ヘイスターバング 音楽/ ヤコブ・グロート 出演/ ミカエル・ニクヴィスト ノオミ・ラパス スヴェン=ベルティル・タウベ (カラー/153分/MAN SOM HATAR KVINNOR/スウェーデン=デンマーク=ドイツ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.06.11 11:13:47
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