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2010.12.31
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テーマ:読書(8206)
カテゴリ:

 今年すっかりはまったタブッキをまた読んだ。
難解な遊び心が、前2作に比べるとやや読みにくいがおもしろい。
まるでひとり笑いであり、自己充足的な喜劇性への進展――だそうだ。注釈にあるタブッキの言葉。内証的であって当然の物語。

 ある夜運びこまれた身元不明の男の他殺遺体。死体置場の番人スピーノは、不思議な思いにかられて男の正体の探索を始める。
断片的にたどられる男の生の軌跡、港町の街角に見え隠れする水平線――。 (データベースより)

 スピーノの身元探しの彷徨が、いったいどこに辿りつくのかは予測不可能で、ただ静かに背だけ見える出口へ向かって読み進んだ。
これまでと同じように、ふつうの小説作法とはちょっとはずれたところで物語は作られていく。首をかしげつつも、魅力的な文体に引っぱられる感が癖になる。

生者スピーノが、死者の身元を求めてさ迷う――。
恋人がいてもどこか冷めていて、友人との関係さえずれたスピーノが、なぜこの他殺死体にはこだわるのか。彼の行動は謎めいていて暗示的で、断片だけの手掛かりを得ながら真実に近づいていく。
結局それでどうなったかなんて、説明できそうもないほどに、不思議で掴みどころのない心の旅路だった。著者自身にとっては、自己の充足を得られた大事な作品なのだそうだが、読者の満足度は、そのためあまり大きくない。雰囲気で読む作品といえそう。
押しつけがましく訴えてこないと、なんとなくこちらからにじり寄ってしまう、そんな一冊だった。


前2作同様、翻訳をされているのは須賀敦子さん。
この方の訳がまた流れるようにスマートな文章で読みやすい。
タブッキの文章の妙味を、きっと見事に捉えてらっしゃるのだろう。
わずか数頁のなかで、端的にタブッキの魅力と作品解説をされる訳者のあとがき、毎度読むのが楽しみなのだ。
来年は、須賀敦子さんのエッセイ作品など読んでみるつもり。


 「ものにはそれ自体の秩序があって、偶然に起こることなど、なにもない。では、偶然とは、いったいなにか。ほかでもない、それは、存在するものたちを、目に見えないところで繋げている真の関係を、われわれが、見つけ得ないでいることなのだ。」   (本文より)





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Last updated  2011.01.01 03:22:01
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