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職の精神史

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2008.04.25
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※この文章は、2003~2006年に大学生・若手社会人向けに配信されたメルマガ『内定への一言』のバックナンバーです。


278.『笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし』


FUNの取材企業数も発足3年で300社を超え、僕が経済誌の記者時代に行った数の半分にまで迫ってきました。やっぱり、集団戦は強いですね。これは、追い抜かれるのも時間の問題でしょう。僕の取材はもちろん「仕事としての取材」だったため、本来の目的は「商談」だったわけですが、それでもお互いの信頼関係がなければ、その後の良い関係は構築できないため、時間を空けては事業観や人生観を聞いていました。

その中で、名言めいた人生訓やスローガンにも触れ、良い言葉と出会うと一日が幸せな僕は、そういう言葉を書き残しては、自分の独立のアイデアを練り続けました。行っていない業種は葬儀屋さんと原発くらいで、他はありとあらゆる業種の会社を取材・営業で訪問したものです。そんな中、人数が少なかった前の会社では、2~3ヶ月に一度ほど、急用ができた先輩社員に代わって取材を行うことがありました。その「代行取材」でも一番困ったのが、唯一の女性社員だったGさんが訪問の予定を入れていた、某下着販売会社の取材でした。

僕は焦りとか不安、緊張という感情にほとんど縁がなく、何かやる時は「うまくいったらどうしよう?」と悩むことがほとんどなのですが、さすがにこの時は「何だって?」とちょっと焦ってしまいました。だって、「下着」ですよ、下着。男ならドンキか100円ショップで済ませる人もいるし、変な趣味がない男以外、そういうものに興味を持つ人はいません。それを、よりによって最年少の僕に、女性用の下着会社の取材に行ってくれとは…。困った。話題がない。

他の会社なら、「最近、こんなのが出ましたね」とか、「A社の○○は優れものですよね」、「利益率を上げるには、ここをこうしてはどうでしょう」と様々な角度からアプローチできるのに、下着ではそうもいきません。ましてや、事前の商品調査や売り場調査でもしようものなら、「変質者」として逮捕されかねません…。値段も流行も全く分からず、知っているのはワコール創業者・塚本幸一さんの伝記だけという状態で、取材に臨みました。

さてさて、会社に入ると…「今日は男性の記者さんって聞いたから、これはよかった、色々聞けると思って、楽しみにお待ちしてたんですよ」と、おばさんのちょっと手前、という感じのにこやかな女性社長が出迎えてくれました。しかも、社員も全員女性。経済誌の取材というのは、そう頻繁にあるものでもないので、3~4人の社員が「話が聞こえる所」で仕事をしています。「こりゃ、こっちが取材されてるみたいやんか…」と腹をくくって、取材を始めようと思ったら…相手がどんどん商品を持ってきて、ニコニコしながらあれこれ聞いてくるではありませんか。

「この商品、どう?これ、パットが入れやすくなってるんです」とか言われて、「着けたことがないので分かりませんが、脱げば一緒ではないでしょうか」と答えると、「やっぱり、男の人は中身が好きなんですね」と笑顔…。うぅ…そう取るのか…。他の社員もこっちを向いて笑っています。「脱げば一緒なんて、冷たいですよ。女の子は必死なんですから」と、リーダーっぽい人に笑顔で言われてしまいました。

「そりゃ失礼しました」と思いながら、「でも、男のシークレットシューズと同じ仕組みじゃないですか」と付け加えると、「あら、そうですね。お友達でも、その靴を履いている方がいらっしゃいますか?」と、また笑顔で質問。「居酒屋に行くと、5cmくらい背が小さくなる友達ならいます」と答えると、「なるほど。じゃあ今は、コンプレックスを解消する商品だったら、男女問わず、比較的若い層にも受け入れられるんですね」と、メモを取っていました。他にも、AだとかDだとか、女性の基準を教えてもらいましたが、女性読者が70%を占める本メルマガでは、これ以上書くと良くないので、これくらいにしておきます。ただ、女性の生活はなんとお金がかかることかと、改めて感じました。

さて、本題はここから。この会社に入って、話を聞いている間ずっと感じていたことですが、とにかく笑顔が多い。それも、作り笑いなどではなく、心から歓迎し、感謝しているような笑顔です。さらに、ビジネスではあまりに基本的なことでも、恥ずかしがらずにどんどん聞いては、「ありがとうございます」と律儀に返し、メモを続けています。設立して1年足らずということで、僕の方が「他の会社と比べて、当社の経営はどうですか?」と、たくさんの質問を受けたほどでした。

しかも、話を聞いていくうちに、どうやら「会長」と呼ばれる人がいることが分かり、その会長さんの信念が、社員に仕事に対するやりがいを感じさせているようでした。その会長さんは当時、50歳近くということでしたが、小学生の頃にお母さんを亡くされたそうで、ご自分が母親の享年を超えた時に、改めて母親の美しさを感じ、それまでの美顔器や健康器具の通販事業に加え、下着販売事業にも進出されたとのことでした。そのお母さんが生前、子供たちに大切にしてほしいと願って捧げた「笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし」という言葉が、この会社(グループ)の社訓となっている、ということでした。

僕は一度聞いて、なんと素晴らしい言葉だろうかと感激し、この会社を訪問してから感じていた温かい雰囲気の謎が解けた気がしました。「嬉しいから笑うんじゃない。笑うから嬉しくなるんだ。笑顔は無料で持ち運びも自由だし、何回プレゼントしても疲れないし、与えれば与えるほど、自分も幸せになる。しかも、相手の心に永遠の希望を灯す」という人生観を聞いて、接客業ならずとも、人生でこれ以上素晴らしい基準はなかなか探せないな、と感動しました。

また、素直じゃないと、悩めば悩むほど自分の停滞や失敗を認めなくなり、どこかに「秘訣」や「近道」があるんじゃないかと期待して、ますます現実逃避をするようになるものですが、素直ならあるがままの自分を見つめることができます。素直さとは「今、ここで、自分から」学ぶ資質のことですから、どんなテクニックより近道だし、強力で本質的です。

現代人は「やればできる」という、人生で必ず成功する言葉を聞いても、すぐに「嘘だろ」、「それくらい分かっている」と冷たくあしらい、相手にしません。しかし、このようなありふれた言葉でも、もし聞く側に素直さがあれば、「そうか、そういうことなのか!」と心から感動するでしょう。でも、「やればできる」という言葉を素直に受け止める寛容さを持ち得ない人は、大金と膨大な時間をつぎ込んでは、「秘訣」を求めてさまよいます。

経営の世界であまりに有名な「ダム経営」は、松下幸之助さんが提唱した「豊かな社会、豊かな経営」を象徴するキーワードで、この言葉についても、とても有名なエピソードがあります。

戦後を代表する大実業家となった松下幸之助さんは、「蛇口をひねれば水が出るのは、ダムに水が蓄えられているからだ。同じように、もし経営資源が欲しいと思って、その時に必要な資源を手に入れようと思ったら、会社にも資金やアイデアのダムを作るのがよい」と考えたわけです。もちろん、これは「欲しいと思った商品が豊かに提供される社会に」という願いも込められている言葉ですが、社内にも適用できる考え方でした。

ある日、京都で、時代の最先端を行く不世出の大経営者が、その持論である「ダム経営」について語る講演会が開催されました。まだ経営に余裕がない社長さんたちが大勢集まり、会場は超満員に。松下さんは、おだやかな関西弁と分かりやすい例えで、テーマである「ダム経営」についての講演を終えました。

さて、講演終了後の質疑応答の時間。経営にゆとりを持ちたいと思ったある経営者が、「わが社もダム経営を行いたいんですが、どうやったらできるでしょうか」と質問しました。その質問を受け、松下さんはただ、「そうですな。それは、ダム経営をやりたいと思うことです」とだけ答えました。会場は「なんだ、そんなことくらい分かっている」、「もっとましな答えは言えないのか」、「期待外れの答えだ」と言いたげな失笑と冷笑に包まれました。

しかし、そんな白けた会場でただ一人、「そうか、そう願えばいいのか!なんと大切なことを教えてもらったんだ!」と感激している若者がいました。それが、まだ創業間もない京セラ社長・稲盛和夫さんだったというのは、学生さんが「ミスチルとサザンは、一緒に歌を歌ったことがある」と知っているのと同じくらい、経営者の中では有名な話です。この話は3年前、福岡女子大でFUNが発足する時のミニ講演会でも紹介しましたが、僕のお気に入りサイトの一つ「Nikkei Biz Plus」が、ちょうど最近のコラムで紹介していました。

http://dp.nikkei.co.jp/colm/nakajimat.cfm?i=20060620ck000ck

この講演会に参加していた会社で、京セラ以上の成長を成し遂げた会社は、もちろんありません。それは、稲盛さんの感動が一番大きかったからです。つまり、「一番素直だった」ということです。「経営に余裕が欲しい。余裕が必要だ」と、他の何事も考えず、ただその一念に集中した稲盛さんだけが、事の本質を洞察し、現実に挑戦できたのでしょう。

学生さんにも、受かり方とか人事担当者の考えなどを聞いて、まめな準備をしたがる人がいますが、心から「働きたい」と思っていなければ、そういうテクニックも全く意味がありません。化粧やファッションが大事だという情報もあるようですが、表情が暗ければ、余計な違和感を強めるだけです。反対に、実務知識はあまりなくても、素直に指摘を受け止め、着実に前進できる若者は、必ず伸びます。また、有り難いことや感動する話を聞いて、心からの笑顔を捧げられる人は、相手にこれ以上ない印象を与えられます。こういう資質は、事前の練習で身に付くものではありません。だからFUNでは、発足当初から「本気は疲れない」と言い続け、本気で大学生活を送ることが最高の準備だ、という考えで活動しています。

世の中には、頑張る方が「疲れる」と決め付け、本気になるのを引き伸ばして周囲を観察してばかりの人もいますが、そういう人は寂しく、悔しいだけなんです。若いうちは、そうやってひねくれてしまうこともありますが、一度感動すれば、若者は驚くべき変化を遂げます。だから、皆さんが「本当は何かに熱中したいんでしょ?一緒に頑張ろうよ」と励ましてあげましょう。二つの最高の財産をもって。






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Last updated  2008.05.09 01:46:26
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Re:278.笑顔に勝る化粧なし・・・(04/25)   しみず ぎすけ さん
小さな店舗で、運営を任されている清水と申します。
「笑顔に勝る化粧なし、素直に勝る技巧なし」や、
ダム経営の話など、自分の心と頭にとってもいい気づきが得られました。 素敵な内容をありがとうございました。
これからも拝読を楽しみしております。 (2013.12.04 11:44:16)


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