職の精神史

こっちは「かなしみの歌」。


就活かなしみの歌（2007夏作成）



かなしみは
人の前では
強がりて
独りになりて
愚痴を言ふとき



かなしみは
心にもなき
言葉にて
志望動機を
偽りしとき



かなしみは
無知なる人の
噂聞き
根拠なくして
逃げまどふとき



かなしみは
字数期限に
こだわりて
職の本質
忘れをるとき



かなしみは
内定の有無
気にしすぎ
初心忘れて
漂へるとき



かなしみは
焦りに駆られ
エントリー
しすぎて後に
見送りしとき



かなしみは
マナー講座で
武装して
真の尊敬
失ひしとき



かなしみは
売上のみに
こだわりて
社員の努力
無視したるとき



かなしみは
自己分析を
やり違ひ
ノート書くほど
暗くなるとき



かなしみは
努力忘れて
阿呆と組み
就活の愚痴
言ひ合へるとき



かなしみは
我が始めし
怠慢を
気分転換と
言ひ換えしとき



かなしみは
我が望みのみ
書き連ね
志望動機を
誤解せるとき



かなしみは
面接終へて
本当に
言ひたき事を
思ひ出すとき



かなしみは
ＳＰＩで
落とされて
会へば分かると
文句言ふとき



かなしみは
会計知らず
会社見て
宣伝文に
踊りをるとき



かなしみは
企業理念に
感動し
その実践を
見落とせるとき



かなしみは
やる気なき友
集まりて
悪しき噂に
囲まれしとき



かなしみは
社名で動く
ミーハーの
噂に染まり
さまよへるとき



かなしみは
人の内定
うらやみて
暗き嫉妬に
閉ぢこもるとき



かなしみは
挫折から逃げ
教訓を
得ずしてまたも
あやまてるとき



かなしみは
中途半端の
目移りを
好奇心だと
偽りしとき



かなしみは
やりとげざりし
行動を
チャレンジなりと
偽りしとき



かなしみは
浅くて狭き
考へで
受ける会社の
なくなりしとき



かなしみは
相談相手
間違へて
無用の知識
受け入れしとき



かなしみは
心の底で
就活を
嫌ひしままに
時の経つとき



かなしみは
やるべきことを
分かりつつ
言ひ訳をして
夢逃げるとき



かなしみは
マニュアル本に
踊らされ
職業観の
未熟なるとき



かなしみは
資格留学
アルバイト
つづりて個性
伝わらぬとき



かなしみは
働くことが
嫌なまま
暗き就活
続けをるとき



かなしみは
おかげさまにて
成ることを
我が手柄と
調子乗るとき