「白洲正子のきもの」
白洲正子 2002/09 新潮社 単行本 140p
Vol.2 No.0230 ★★★★☆
失敗はいくらもありました。反物で気に入って、さて作ってみると、似合わない。そんなことを繰り返しているうち、いつの間にか自分の好みがきまって来た。今では同じようなものばかり、たまに買ってもまた同じようなものになりますが、結局最後は誰でもそういう所に落ちつくのではないでしょうか。人に見せるのではなく、自分がたのしめばよい。きものはその為にあるのです。p90白洲正子「きもの美」より
思えば、当ブログ「スピリット・オブ・エクスタシー」カテゴリは、Oshoのペインティング・ロールスロイスに触発されてスタートしたのだったが、その原点となった「The Black Kimono Rolls Royce」が、久保田一竹の一竹辻が花に触発されたデバ・ピーターの手によってRRの上に書かれたことを思い出すと不思議な縁を感じる。
たしか、「白洲正子"ほんもの"の生活」にも辻が花が紹介されていたが、「一竹」ではなかった。一竹辻が花は、一説に一着5000万という説もあるくらい、すでに庶民の感覚から離れ、着物という概念からも遠く飛翔してしまった感がある。だが、この本で紹介されている着物は、(実際はどうか知らないが)自分たちの手から遠く離れてしまった美術館的「美」の着物ではなく、「人に見せるのではなく、自分がたのしめばよい。」という感覚の着物である。そこのところが私はうれしい。
と言っても、着物は現代人の通常の生活からはかなり遠く離れてしまった。戦後生まれの私でも、ほんの小さい時には、身の回りには着物を着た人たちはたくさんいた。いや着物のほうが多かったのではないか。かくいう私も、着物を着ていた記憶があるし、寝巻きなどは、姉のお下がりの赤いものを着て寝ていた記憶がある。
英国流カントリー・ジェントルマンのお洒落を決めるカッコいい白洲次郎が生きている隣で、日本の着物を着こなす正子。まったくなんというカップルだろうか。スコッチ・モルト・ウィスキーを愛する次郎と、古伊万里を愛する正子。ポルシェと能。この対比がなんともかっこいいね。