奥田瑛二監督舞台挨拶上映に。モントリオール世界映画祭グランプリ受賞の「長い散歩」。
このところ、続けて通うことの多い伏見ミリオン座さんで、
午前11時からの上映とのことで、30分前に到着したところ、
160あまりの座席のうち、すでに整理番号は140番台で、直ぐに満席に。
番号順に呼ばれて、場内に入るも、画面を観やすい上方の席は埋まっていたので
やむなく、谷底のような最前列へ・・・。やれやれと一瞬思ったのですが、
よく考えると、舞台挨拶ならばこの場所が絶好なのでは?
はい、案の定、役者さんを含め、皆様仲良く谷底のフロアへ降りていらっしゃって
目の前でお姿を拝見することができました。
【るにん】
小学生のときから奥田さんのファン。長じてご出身地近くに住むことになった
ご縁を嬉しく思っていました。今回の作品は、地元での撮影がふんだんにあり、
ご近所で、どこかで観たことのある風景が満載なのも嬉しく。
奥田さんをライブで拝見するのは、6年ぶりの2回目。
俳優として、映画監督として、ますます男ぶり、人間ぶりをあげていらっしゃる稀人です。
【長い散歩】
家族を省みることを忘れて職務に没頭し、校長にまで登り詰めた安田松太郎(緒形拳)は、
定年退職を迎えた直後、アルコール中毒になっていた妻を亡くしてしまう。
住み慣れた家を娘に残して、うらびれた安アパートで一人暮らしを始めた松太郎は、
すぐ隣に住んでいる荒んだ雰囲気の母(高岡早紀)とその情夫(高橋智知)、
5歳の娘・幸(杉浦花菜)の部屋から、日毎夜毎聞こえてくる物音によって
虐待や暴力が行われていることを察知する。
最初は手をこまねいていた松太郎だが、ある出来事をきっかけに
とうとう天使の羽を背負う幸を連れ出し、二人は共に「長い散歩」に出発する・・・
虐待、自殺、DVをテーマにした今作。
映画製作に先立って、奥田さんは児童虐待防止センターに何度も通われたそう。
関係者の方々はこれまで取材を受けたことはあっても、映画となる例はなかったよう。
驚きながらも、監督から渡された台本を読まれてその真摯な姿勢を受け止めた後は、
一気に子供達の悲痛な思いの数々をお伝えくださり、映画の重要な要素として結晶したようです。
奥田瑛二氏の出演作、監督作は、常にお腹にしっかり力を入れて対峙しないと
喰われてしまいそうな、時に目を背けたくなるようなハードな作品も多いのですけれど、
今回は、テーマの重さに比すれば、かなりソフトに作られているように思います。
天使の羽、ひらひらと舞う蝶や鳥やさざなみといった、
偶然も含めたファンタジックな演出で、息詰まるような場面も
どこかおとぎ話を聞いているがごとき、紗から透かしたような描き方に。
【少女~an adolescent~】
それでも、やはりいつもの作品と同じように、観るものを深く内省させずにはいられない。
これまで頭を上から押さえ込まれて「この人を見よ」と示されていたのに対し、
目をそらせることなく観ているうちに、いつの間にかじわじわと
皮膚から背骨にまで染み通ってゆく。
そんな、ひとつ上方の雲のステージにぽんと飛び乗ることができた佳品。
数々の受賞も、扱うことが困難な題材に取り組み、
万人にうったえる映像に昇華できたからでしょう。
主役の緒形拳さんの起用は、奥田さんがCMで共演されて以来、温めていたものだそう。
これほどの名優を生かす作品はないかと考え、自分で作ってしまえるところが
天職と定めた監督という職業の素晴らしいところ。
実際に、モントリオールの会場では、松太郎は絶賛されていたようです。
観ていていいなと思ったのが、全速力で走るシーンと、幸が心を開いたときにうなずく声。
静と動を背後にある想念とともに醸し出せる方。
母役の高岡早紀さんは、ちょうど先週、「寝ずの番」でも観たばかり。
双方、セクシャルな演技が必要な役ながら、それぞれ違った味わいかつ
ダークな澱を残さない。
今回のテーマのキーポイント、「暴力・虐待の連鎖」の犠牲者の一人としての哀しさも、
きちんと伝えられるクレバーな役者さんです。
【寝ずの番】
長い散歩の途中で知り合う行きずりの若者に松田翔太さん。
力のある、どこかで見たような瞳だなあと心に残っていましたら、
こちらは先日放映された「NANA」でつくづくと見入っていた松田龍平さんの弟君。
茨の道を好んで進んだ故人の、静かなる疾風怒濤のDNAをしかと確認、
これからが愉しみです。
もちろん、俳優・奥田瑛二氏の出演も。
高岡早紀さんとの甘味所でのシーンでは、このまま二人で出奔してしまったら
もうひとつの「長い散歩」のストーリーが出来てしまいそうな、よい雰囲気でした。
【UA「傘がない」収録】
「最近は、ずっと家にいるようになりました。」
「監督をやるようになってから『奥田君は、やっと大人になってきたわね』と
家族に言われます。」そんな風に舞台挨拶で語っておられた奥田さん。
愛を求め、信じられるものを外に探し続ける飢餓期を経て、
ようやく幸福の呼び水となる「一滴の水」を見つけ、ご家族と共にその提供者になった姿は
妻を泣かせ、娘に見放され、己を直視させる場所から逃れたと思った先に
家族の学びを今一度歩めと示された、釈迦の掌にいるような松太郎の道行きに重なるのです。
そして、愛を求め、家族のあるべき姿を探す、すべての人の道行きに。
お近くでご覧になる機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
☆ 奥田監督、いま再び、家族について、愛について、
深く静かに思いを馳せていらっしゃると思います。
御母堂のご冥福をお祈りいたします。
「長い散歩 公式HP」
「魔物の倒し方・奥田瑛二さん」
「適職と天職・至上の愛・奥田瑛二さん」
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