大竹しのぶさん、市村正親さん、宮本亜門さんがコラボレート。
一度は体験しておきたい方々の舞台、と思いチケットを取りましたが、
ああ、とんでもないものを観てしまいました。
もちろん、素晴らしい作品という意味で。
【舞台の内容に触れますので、お読みになりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
【あらすじ】
妻を奪われ、無実の罪を着せられて流刑になった理髪師のベンジャミンは、
脱獄して15年ぶりにロンドンへ舞い戻る。
元の住処であるロンドン一不味いパイ屋の二階で、
再び理髪師・スウィーニー・トッドとして腕を振るい始めるが、
それはすべて、彼を陥れた者たちへの復讐のため。
やがてパイ屋はロンドン一美味い店として名を馳せ、数年がたち…。
時代的雰囲気は、映画「オリバー・ツイスト」をご覧になった方は
イメージを重ねていただけると、とっても近いと思います。
産業革命の影響で煤けた街と同様、命や心が荒み軽んじられた時代、
金品の匂いが充満した、法の名の元にという免罪符によって
人の身がいともたやすく、荒縄や絶海の孤島や病棟にダストシュートされてしまう、
そんな風潮を強烈になぞった実話に基づく作品。
おととしの暮れ、たまたま録画していた歴代のミュージカルの紹介で
ほんのさわりを目にしていた「スウィーニー・トッド」。
こんなに早く、拝見できるとは思っていませんでした。
しかも、日本でも指折りの役者&演出家の手による舞台。
市村さんの役者ぶりは、藤原竜也くんとの芝居で目の当たりにしていましたけれど
ミュージカルは、初めて。
私のミュージカル体験の原点である「ジーザス・クライスト・スーパースター」で
ヘロデ王→ジーザスを、さらに日本初演版の「オペラ座の怪人」で
ファントムを演じておられたと知って以来、楽しみに。
「ドン・ジョバンニ」的ラストまで、核なる役目を果たしておられました。
大竹しのぶさんは、寡聞にしてTVでしか拝見したことがなかったので
舞台、特に歌のことは未知数でしたが、
美輪明宏さんが彼女の歌をとても褒めていらしたこともあり期待を。
ふたを開けてみると、役柄の感情を完全に乗せきった歌いぶりは、
本当に群を抜いていて、ミュージカル初挑戦とは、とても思えない素晴らしさ。
役どころはパイ屋のおかみさん。
理髪師をかばい、励まし、葛藤を吹き飛ばすように、
朗らかに、ときにべらんめえのだみ声を織り交ぜて語り聴かせる、
愚かながら愛のすべてを注ぎ込んでゆく女。
彼女の存在なくしては、この作品はおどろおどろしいホラーにもなりかねない、
そんな難しい役どころを、見事に生きていらしゃいました。
思いがけない見どころになったのは、ソニンさん。
理髪師の実の娘を、甘く悲しく、オペラヴォイスに近い美しい歌で表現。
これから、どんどん伸びてゆかれることと思います。
ミュージカルなど舞台を観た後は、その音楽やシーンが、
どれほどフラッシュバックしてくるかも、感動の度合いを測るもののひとつ。
さすがは世界をまたにかけた方の息吹が吹き込まれただけあって、
10日近くたってもテーマミュージックやあらゆる場面が蘇ってきます。
それは役者の方たちが、いかに言葉を自分のものにしているかということでも
あるのですけれども。本当に舞台上に棲みついていたと思えるのが、やはりパイ屋の女主人、
期待にたがわず、稀代の女優さんでした。
カーテンコールは、そのあと夜の公演が待っているにもかかわらず4回、
市村さんの観客を大切にされる姿勢には、今回も脱帽、
先回の舞台も、藤原くんを引っ張って何度も戻ってきてくれましたっけ☆
スタンディングオベーションに相応しい舞台、久しぶりに
「また観たい」と思える作品に出会えたことに、感謝します☆
「演劇映画文学談義」
「オーラの泉・宮本亜門さん」
「仮面の男ふたり・『ライフ・イン・ザ・シアター観賞』市村正親さん&藤原竜也くん」