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今が生死

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2008.07.24
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カテゴリ:読書
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果実を持つ女(ポール・ゴーギャン)

やっと「月と六ペンス」を読み終えた。「月と六ペンス」はサマーセット・モーム(1874-1965)が1919年に出版した小説で、発売後直ちにアメリカ、イギリスでベストセラーになり、モームの名を世界に知らせるきっかけになった本である。

画家ポール・ゴーギャン(1848-1903)をモデルにした作品と言われているが、主人公ストリックランドは小説上の人物で、ゴーギャンその人ではない。しかし読む人誰でも「これはゴーギャンのことを書いているな」と思う。ストリックランドは特異な性格で平気で奥さん子供を捨てたり、友人を裏切ったりする男である。自分勝手で何を考えているのか分からない人間として描かれており、よくゴーギャンの家族や関係者から名誉毀損で訴えられなかったなと思った。

プライバシーがうるさい現今では到底許されなかったと考えられるが、当時はまだそれほどプライバシーが言われておらず、このような作品も許されたのだなと思った。

芸術至上主義の男ストリックランドの後半生を克明に描いており、晩年タヒチで多くの傑作を残し、自分の家の壁一面にこの世のものともあの世のものとも思われないすごい作品を残して死んでいくが、死後それは遺言によって、現地妻アタによて家ごと燃やされてしまう。

モームは何を言いたかったのであろうか?およそ67年前に本書を翻訳した中野好夫氏は、「モームの作品は、一切の通俗性という皮を剥ぎ取った最後に人間の不可解性という核にぶっつかる。いわば永遠の謎として人間の魂を描くこと、それが彼の唯一の主題であると言ってよい」と述べている。

本書では、ストリックランドおよびそれを取り巻く人達の様々な人生がドラマチックに描かれている。「人間というものは不可解だが、その不可解の中に本当の魂というものはきっとあるはずだ」と必死でそれを探しているモームの姿を見たような気がした。

通俗小説だが大変面白く、人生を色々考えさせてくれた良い本だったと思う。





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Last updated  2008.07.25 00:41:19
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