40代女性、右上6、歯冠破折
前回、インレー・クラウンはセメントがなくても長期にわたって虫歯にならない(こともある)という話をした。今日はその例で、良く見かける症例だ。
インレー下の歯質が欠けたので、インレーを除去し再治療をすることにした。
除去してみると内部は硫化鉄(FeS)で黒くなっている。要するにセメントは効いておらず隙間が出来ており、硫酸鉛還元細菌の住処となっていたのだ。
歯科医師は経験的に知ってはいてもなぜそうなのか?という説明ができない事象が沢山あるが、電気化学的な視点を持てば簡単に説明出来る。
例えば虫歯はなぜできるのか?酸で溶けるのか?やってみたことのある歯科医師はあまりいない。歯学部でもそんな実験をしない。抜歯歯牙をコーラ程度のPh3の酸に数週間漬け込んでも溶けてなくなったりしない。そんなことは有ってはならない不都合な真実なのでスルーしている。
虫歯の成因もよくわかっていないでは、エビデンスも何もあったものではない。歯科業界とはそんなところだ。
「虫歯の電気化学説」に立てば虫歯の成因は簡単に説明出来る。歯牙(ハイドロキシアパタイト)は水素イオン伝導性セラミックスで何らかの起電力が発生すれば水素イオンは歯牙中を通り抜け、外に出るときにカルシウムから電子を奪って水素ガスになり、カルシウムはイオンになり溶出する。これが虫歯だ。
https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/201112020000/
ここでの黒色色素FeSはイオン伝導の抵抗体なので、水素イオンの伝導を妨げることにより虫歯を防ぐ。
歯科医師は経験的には黒い虫歯の進行は遅いと知ってはいるが、その理由は知らない。
またこの症例ではインレーの合着用セメントにカルボキシレートセメントが使われていたが、このセメントは虫歯になりにくいと言われているがその理由も知られていない。
電気化学説では簡単に説明出来る。リン酸亜鉛セメントもそうだが、このセメントには亜鉛が含まれており、亜鉛は歯質よりイオン化傾向が高い。要するに歯質より先に溶出して歯質を守ると考えられる。これはカソード防食として工業分野では金属腐食防止に役立てられている。歯科業界も取り入れるべきだ。
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いつまでも虫歯は治らないので削って治療などというエビデンスのないことも言っていられないだろう。
では時系列で見てみよう。