前回歯冠が形成される過程のイメージを言葉で書いたのだが、このイメージを掴むことは虫歯をはじめとする歯のトラブルの原因と対策を考える上で重要なことだ。この知見がないと的外れで、予後不良な治療行為とは言えないことをやってしまうことになる。
https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202403140000/
象牙質を作る象牙芽細胞とエナメル質を作るエナメル芽細胞がお互いに向き合って配置された半球状のシートがあると想像してみてください。
それらが一斉に象牙芽細胞は内側向きに象牙質を作り始め、エナメル芽細胞はエナメル小柱と呼ばれる細長いハイドロキシアパタイトの結晶構造を作りながら外側に向かって移動していく。
ここで取り上げる下顎の6番の場合、その半球状の塊が5つあって、押し合いへし合いしながらエナメル質と象牙質を作りながら大きくなっていく。
その内2つの塊が作ったエナメル質の境目が溝で、3つの塊が作ったエナメル質が合わさったところは深い窩になる。
分かりにくいだろうと思って絵を描いてみた。もう手が壊れて絵が描けなくなって30年以上経つので、見にくいかと思うが、こんな感じだ。
右の一番上の半球状の内側に象牙芽細胞がシート状に並び、外側にエナメル芽細胞が接して並ぶ。
これが一斉にエナメル質と象牙質を作りながら歯冠の厚みを増していく。
左の3つの流れはそのシートの一部を拡大した図だ。
エナメル質はハイドロキシアパタイトそのものの結晶で六角形のエナメル小柱と呼ばれる構造体が密な集合体を成している。
象牙質はこれも六角柱の構造体の集合体だが、その真ん中に象牙芽細胞の突起が残るような構造があり直径1〜2μm程度の細い管が歯髄内部まで続いている。
これは象牙細管と呼ばれているが、検索すると画像はたくさん見るとこができる。
http://www.yamazakidc.net/17/guide.html
実際の歯の発生では
半球状のユニットがいくつか合わさって歯冠が形成される。
下顎の大臼歯の歯冠は5個の半球から成り立っている。
これらの半球の境目が
溝や
窩になるということだ。
粘土で作ってみた。多分他では見られない画像だと思う。
上顎の大臼歯は4つだ