サントリー美術館で１１月２９日まで開催の「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし 」展のメンバーズ内覧会へ。
大好きな「納涼図屏風」を描いた人やので、楽しみにしてた展覧会の前期（第一期）。
久隅守景(くすみもりかげ)は、江戸時代初期の狩野派出身者の絵師。
狩野探幽に師事し、探幽門下四天王の筆頭と目されるまでになり、探幽の姪・国(くに)と結婚し、二人の子供を儲ける。
しかし、娘の雪信(ゆきのぶ)は探幽の弟子と駆け落ちをし、息子の彦十郎(ひこじゅうろう)は佐渡へ島流しになるなど身内の不祥事が続いたため、探幽のもとを離れたといわれているそう。
晩年は、加賀藩前田家の招きで金沢に滞在し、とくに農民風俗を詩情豊かに描き出した「耕作図」などにおいて独自の世界を確立してはる。
生まれたのは1596年から1615年の間、亡くなったのは1688年から1704年の間で、活動時期は1624年から1696年？ぐらいではないかとのこと。
家系、出自、生没年など、彼の生涯について詳しいことはわからないという。
（筆名がないのは、すべて久隅守景筆）
「知恩院小方丈下段の間障壁画 四季山水図」 十八面のうち西側四面の夏景図 制作年が1641年頃と明らかな数少ない作品。寺外初公開やそう。
「四季山水図襖（富山・瑞龍寺）」右四面。
「山水図（個人蔵）」 今は３幅の軸に分かれてるけど、もとはひとつの屏風に貼られてたものやそう。畳の目が写って空や地面の質感の効果的な表現になってる。
「十六羅漢図 （神奈川・光明寺）」 羅漢さんに耳かきされてる龍がかわいい。
「四季耕作図屏風（神奈川県立歴史博物館）」狩野探幽筆 もあった。
「四季耕作図屏風（耕織図）（東京国立博物館）」左から右に季節が流れていく。針に糸を通そうとしている女性や雉の一家も。
「四季耕作図屏風 （個人蔵）」これは、右から左に季節が流れてる通常のバージョン。
「耕作図屏風（千葉市美術館）」驟雨のなか一つの傘に入る３人の大人と子ども１人、袖を広げて被る男、布を被って雨を避ける二人の子ども、だれの表情も生き生きとしてる。これ好き。
「納涼図屏風（東京国立博物館所）」木下長嘯子の和歌「夕顔の咲ける軒端の下涼み男はててれ（襦袢）女はふたの物（腰巻）」がテーマらしい。女性の手足の指、肘のくぼみが色っぽい。 11月3日までの展示。
「夕顔棚納涼図（古礀明誉筆 個人蔵）」も横に展示されてた。
階段を降りた第２展示室の正面には、
「鍋冠祭図押絵貼屏風（個人蔵）」 滋賀県米原町の筑摩神社に伝わるお祭りで、女性は情を交わした男性の数だけ鍋を被って参詣。その数を偽ると神罰が下るという。鍋を５つ被った美人さんとその隣には鍋を被ってないおかめさんのような女性。
「賀茂競馬図屏風（神奈川・馬の博物館）」上賀茂神社で５月５日に行われる賀茂競馬。迫力がある。居眠りしてる見物人や駆ける子どもが守景らしい。
「花鳥図屏風（石川県立美術館）」 五月の水辺に映る月を眺めているミミズクがかわいい。
第３展示室へ。
「都鳥図(個人蔵）」なんともかわいらしい。
「蘭亭曲水図屏風」 話し声まで聞こえてきそう。
最後のコーナーは、守景の二人の子どもの作品。
娘の清原雪信は、探幽に学んだ狩野派随一の女性絵師で、井原西鶴の「好色一代男」にも名前が出てくるし、初代岩井半四郎が1695年に雪信がモデルの「狩野雪姫」という歌舞伎を上演してるそう。「祇園祭礼信仰記」の雪姫のモデルも雪信やったんや。
「栗鶉図」「小督図」「龍頭観音・鶴・亀」「観音図」「普賢菩薩図」「文殊菩薩図」「王昭君図」「唐子遊図」など。
息子の久隅彦十郎（狩野胖幽）は、「鷹猫図屏風」だけ。なんかバランスが変。
守景の「四季耕作図屏風」は、温かい物語が感じられて、ずっと観てても飽きることがない。
６階ホールでのスライドレクチャーにも参加した。
蓬澤氏の挨拶の後、この展覧会を企画した学芸員の池田芙美氏からスライドを使った解説があった。
久隅守景の企画展はこれを逃すと関東ではあと２０年はないだろうとのこと。
レクチャーの後、説明されたポイントを踏まえてもう一度作品を観ていった。
こういう展覧会の楽しみ方もええなあ。
６期に分かれた展示期間で、大きく１１月３日までの前期と１１月５日からの後期では展示作品がほとんど入れ替わる。
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