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カテゴリ:酒場
地方のすばらしい酒場を訪れるといつも思うことがあります。ここに次に来れるのはいつなのだろうか。もう二度と来れないかもしれない。この酒場の魅力を隅々まで記憶しておきたい。ところが、酒っていうのは、呑み始めたその時点からいろんなことを忘れるようにできており、酒場の記憶というものを大事にし過ぎると、酒が呑めないということになります。
ぼくの場合、これを呑んだとかあれを食べたなんてことはどちらかというと忘れてもいいことです。むしろ見知らぬ人々のなかにあって自分自身も含めてまったく赤の他人となり、ひととき解放されたような気分になれる。そんな気分だけは記憶し続けなければならないと思っています。 ぼくたちは、日々、かけがいのないものを失い続けています。ぼくにとっては、酒場がそのひとつです。すばらしい気分を与えてくれ、すでにその終焉を迎えた酒場のいつくかを思いつくままに綴りたいと思います。 池袋 中華スナック まるや ・池袋の北口を出て、ロサ会館を越え、しばらく川越街道方面に劇場通りを進むと左手に飲食店が中心の商店街が見えてきます。そこはかつて池袋三業地が広がっていた一帯で、戦後の復興後にも40軒近い料亭と200名程の芸妓を抱えていたそうです。今でもいくつかの料亭風の建物を見ることができますが、現在でも営業しているところはあるのでしょうか。三業通りと呼ばれる通りを歩くと左右には居酒屋、スナックに混じって青果店や床屋さんなどが昔の面影を残して営業しています。この通りには「熊の子鮨」という立ち食い寿司屋があり、給料日なんかにはこちらで寿司を握ってもらったりしましたが、数年前閉店されたようです。御嶽神社に繋がる横道を越えるとさらに場末さが増してきます。ここに「中華スナック まるや」はありました。屋号に惹かれて入ったこちらは料理自慢のおかあさんと年齢不詳の息子さんのような旦那さんで営んでおられました。朝方まで営業をしているので、近隣のスナックの方なんかもよく来ていました。スナック風の内装でありながら、ラーメン、餃子ばかりでなく、さまざまなおいしい肴が激安でいただけることもあって居酒屋感覚で頻繁に利用させてもらった時期があります。〆のホットサンドイッチは定番のメニューとなっていました。昨年久しぶりにこの界隈に呑みに行った際、建物や看板等はそのままに閉店となっていることを知りました。メニューにない品ばかりオーダーしてもさっと対応してくれたママさん、華奢でありながら野太い声が印象的でいつもにこやかに迎えてくれたマスター、おふたりが今どうされているか気掛かりですが元気でおられることを願います。 御茶ノ水 まいまいつぶろ ・御茶ノ水駅の聖橋口改札を出るとすぐに今でもキッチンカロリーがあります。そのすぐ隣に「まいまいつぶろ」がありました。まさに鰻の寝床のような細長く奥深い店内はいつも暗くてとても都心の駅前とは思えず、まさに魔窟に潜入した気分になったものでした。トリスはワンショット140円だったかな、寡黙なマスターはほんの一杯だけ飲む客にも他の客同様クールな表情でさらりと応対してくれて、月給前なんかにも重宝させていただきました。今はカレー屋さんになって当時の面影はまるで偲ぶことができません。 淡路町 とん吉 ・「神田 藪そば」や西洋天ぷらの「松栄亭」など多くの老舗を抱えるこの一帯も再開発の波にさらされており、淡路町交差点に面した「やきとり」の橙色のテント式看板が印象的な「とん吉」もすでに閉店して随分になります。古びてはいるもののどこといった特別なことのないこうした酒場の消滅を残念に思うしかないのでしょうか。 愚痴っぽくなってしまったので、ここまでにしておきます。以下には行ってみたかったのに結局行けず仕舞いになってしまった酒場名を挙げておきます。失われたものについて思いを馳せるときには、いつも手遅れになってしまったことへの後悔ばかりが胸に去来してしまいます。後悔しないためにもこれまで以上にせっせと酒場を巡らないといけないと心に刻むのでした。 池袋 長野屋酒場 ・憧れの酒場、再開したとの噂に何度か足を運ぶもののすでにマンションに建て替わっています。 田端新町 神谷酒場 ・建物だけでも見てみたいと思い、足を運ぶもののどこにあったのかさえ分かりませんでした。 曳舟 赤坂酒場 ・閉店後、数日たってはじめて訪れ看板の下ろされた空っぽの店舗のみ眺めることになりました。 赤羽 大久保酒場 綾瀬 三幸酒場 東十条 大林酒場 大井町 大山酒場 ・コメントの言葉さえ浮かびません。ぜひ一度は暖簾をくぐっておきたかった酒場です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/10/31 08:24:44 PM
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