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カテゴリ:神奈川県
南橋本駅はJR相模線のちいさな駅です。相模線沿線の駅で下車することはぼくにとって極めて稀なことです。その理由は書くまでもないことですが、自宅から遠い割には旅情を掻き立てるというにはいささか近過ぎる。そればかりでなく何度か乗車した際に車窓から見える風景は郊外の住宅街という印象が際立つばかりで、とても途中下車してみようという欲望が湧いてこないのです。ただ南橋本に行っておきたい喫茶店があったので、久し振りの相模線に揺られながら車窓からの風景をボンヤリと眺めながら下車すべきか悶々としている内に、列車が駅に滑り込もうとした際に目に入ってきた風景は、沿線では例外的と言っていい程に寂れていたのでした。これは降りてみる価値ありと決心するのはあっという間のことでした。駅を出てすぐに視界に飛び込んできたのは、駅前酒場はこうあるべきという理想的な佇まいの酒場と仕事帰りにこんな喫茶があればとこの駅の利用者を羨みたくなるような喫茶店がありました。
これは後で寄らねばなるまいとすぐさま店に飛び込みたくなるのをぐっと堪えて、ひとまずは目当ての喫茶店を目指すことにします。店の名は「珈琲専科 コロンビア」で、すぐに辿り着いたのですが、閉まっています。気配を伺うものの閉店してしまったかのようにも感じられます。無念!気を取り直して今少し散策の足を伸ばすとプレハブ造りのこれまたそそられる「やきとり のぶちゃん」なる酒場がありますが臨時休業との貼り紙がしてあります。これまた無念。いずれ再訪せねば気が済みません。 やむなく駅前へと取って返すことにしたのですが、ここで「家庭料理 みどり」なる通りから奥まった狭い路地の先にある店が目に留まり、気になったので立ち寄ることにしました。風情のある引込み路地ですが店はまあごく平凡という印象です。店内はカウンター5席にテーブル2卓というごくありがちな造りのお店です。カウンターには早々と呑んでいるお客さんもいて、しばらくするとテーブル席にも夫婦連れが入ってきました。店内を見渡すと店主の釣果を誇らしげに見せつける魚拓が飾られています。気さくな店主夫婦の主人と客の会話は釣り自慢となっていて、女将さんはしようがないわねという表情を浮かべています。どうやら釣り師の集まる店のようです。お通しの煮物が立派でこれでも2,3杯は呑めてしまいそうですが、せっかくなので刺身も頂きました。これもまた良し。特別ではないものの温かい雰囲気が嬉しい良いお店です。 さて、駅前に戻りとりあえずは喫茶店「コーヒー&レストラン キャビン」に伺っておくことにしておきます。典型的な駅前喫茶の装いで、これといった飾り気はありませんが、抑えめの照明が心地よい静かで落ち着けるお店でした。想像した通りの通いたくなるようなお店です。 さて、そのお向かいにあるのが「居酒屋 としちゃん」てす。駅舎の階段を降りて徒歩10歩。便利なことこの上ないながら、今時これほどまでに枯れた駅前酒場はそうそうありません。カウンター10席に満たぬ狭い店内は開け放たれているものの通り抜ける風が気持ちいいのです。存外に若い店主は無口そうな風貌に反してなかなかのお喋りで、かつてこの町は賑わっていて、というのも企業の寮が多く若い人が大挙して押し掛けたがすっかり寂れてしまった、ご自身は巣鴨の生まれで幼少時に南橋本に来て以来はずっとここで過ごしているので故郷は南橋本であり愛着もあることなどをひっきりなしに語られます。そんな話をしながらもお通しのマカロニサラダを作る手は休めることなくそれがアテにピッタリでついつい酒が進みます。何だかとにかく楽しくていい気分になっちゃったなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/09/05 09:14:27 AM
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