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カテゴリ:中央区
こちらを継続してご覧くださっている方であれば―もっぱら独り言を呟いてばかりで、書き込みが滅多にないこのブログでは常連さんがどの位いるかなど知る由もないのです―、もう耳にタコが出来ていてもおかしくないので、お話を引っ張るつもりなと毛頭ないのでありますが、かつてのぼくは酒には興味はあっても、酒場に関しては安さを最重要視するような、とにかく実用一辺倒な酒場選びをしていました。それは映画を見る事に相当なる情熱と金銭を費やしていたからという言い訳が成り立つ程度の相当であったわけです。もともと行った酒場の事を感想などなしの店名と駅名そして金額のレベルという最低限のメモを取り始めたのも、映画の終わった後に顔見知りの映画マニアたちと酒を浴びるように呑みつつ互いの感想をぶつけ合うための場所を映画館のある町に確保するためであったのです。今晩はここで映画を見るから終わったらウロウロと酒場探しの労を払うまでもなくすぐさまに語り合いたかったのです。なんてことを書くとさも熱い青春時代を送っていたかのようだけれど、そんなことは少しもなかったのであります。って、本旨からどんどん外れていますがつまりは映画のメッカである日比谷や銀座では随分とたくさんの映画を見てきたし、それだけの時間潰しもしてきたのです。だけれど、経済重視のぼくは日比谷で呑もうだなんてことを少しも思わなかったし、実際日比谷とか有楽町エリアは敬遠するをモットーとしたのです。確かにガードした酒場など魅力的に思えるスポットもあるけれど、それは観光資源でしかないと割り切っていたのだ。 だから、「爐端 本店」なんていう炉端焼き店のような店があることなど見てはいても視界から排除してしまっていたんだろうなあ。改めて眺めてその居酒屋然とした立派な構えにすっかり参ってしまった。慌ててネットで調べてみるとどうも結構なお値段だそうな。しかしまあいつかは間違いなくお邪魔するのであれば、今入っておくに越した事はない。なんせいくら人気店であっても唐突に店が無くなることなどそう珍しくはないからです。店内にはお二人の女性がいるばかり。大きめのテーブルも3卓ありますがやはり炉端焼きのお店ならカウンター席にすべきだろうなあ。焼きの担当らしき男性は無表情に腰を下ろしてこちらを見るともなしに観察しているようです。それにしても使えない席が出るほどの大皿がズラリと並べられていて、これでホントに焼物ができるのか。と勿体ぶっても仕方ない。こちらのお店はこの大皿から食べたい品をチョイスして腰を下ろした男性が鍋で温め直してくれるという塩梅で、焼物はないし例の大きなシャモジもないのです。フロアー担当の高齢の方が店の主人のようです。これだけの料理はとても捌けぬだろうと思っていたら、外国人観光客たちが波状的に訪れて帰る頃にはほぼ席が埋まりました。こういう古いいかにも日本風のお店は日本人より外国人が好むということでしょうか。料理は鳥や筍の煮付と豚のケチャップ煮などの煮物が主流です。席の前には巨大オムレツなどもありますが、とにかく一品ごとの量が半端じゃないから頼み過ぎは禁物。非常に美味しいけれど味付も濃い目だし。さて、混み合ってきたのでお暇しましようか。勘定は、そうねえ覚悟しておいて良かったなというものでありました。懐具合のあったかなパトロンがいたら、4名位で訪れて、もっとあれこれ摘んでみたいものです。良くは知らぬけれどどうも日本の外食費は諸外国からみると手頃らしいから、外国人観光客にはそれなりに納得のいくものなのかもしれぬ。今後こうした古い居酒屋が増えるとなると、それはちょっとばかり困った事だな。やはり値段の明示されぬ酒場は普段使いには厳しいです。 それにしても裏路地ではあるけれど、「多る満」などという分かりやすいくらいにぼくの好みのツボを付く店があるとは迂闊にもほどがあるというものです。店内も飾り気なく質素でこれもいいなあ。値段もはっきりして明朗安心だしね。お客さんは他に一組だけとやや寂しい。有楽町ガード下が大改修となり、一掃されつつある今、若者や訳知り顔の中年サラリーマン達がこぞって、そうした生き残り店で満足げに呑んでいるけれど、あれは傍から眺めるのが愉快なのであって、現場に身を置くとさほど面白くないものなのだ。むしろ凡そ日比谷とは思えぬこうした昔風の大衆食堂で呑むほうが貴重なのです。さほど大した肴はない。手頃な単品の肴を組合せてメシと味噌汁などを頼むシステムなのだろうが、試しに定食を想定してみたらうーむ、案外いい値段になるなあ。白身の魚の西京漬などは味がほとんど無かったからメシを掻き込むにはいささか厳しい。でもそれでもこの静謐な空間で燗酒をチビチビやる幸福はガード下ではけして得られぬものです。満足です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018/10/12 08:30:09 AM
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