|
カテゴリ:神奈川県
そういえは鴨宮ってうんざりする位に通過しているし、はるか以前に下車したこともあったはずだけれど、例のごとくに少しも覚えていないし、少なくとも呑みに降りた事がないのはまず間違いないはずだ、などという事実を軽く酔った頭で弄んだのでありますね。呑んだことのない町、というかより端的には鉄道路線の駅そばの酒場は非常に気になる。特に都内近郊の鉄道駅で降り立って呑んでいないというのは至極残念だし、何よりそれに気づいた以上は激しく誘惑されるのです。これこそが本来は町歩きの楽しさです。この二日というか三日に及ぶ知らない町巡りで、最後の最後になってようやく全く事前の調べのない町に降り立つという甘美な誘惑を跳ね除けられるほどにぼくはできた人間ではないし、それを忌避すべき理由も何一つないのです。なんて二日酔いの朝は、決まって寄り道に理屈を付けようとするのが良くない癖であります。気になったから下車したと素直に書けばいいだけではないか。ともあれ懐かしくそれなりに馴染みのあるつもりの鴨宮で初呑みすると決意して、改札を抜けたのでした。
さて、勝手も分からぬのでとりあえず駅周辺をリサーチしようと歩き始めるやすぐさまに「大衆食堂 ふじや」が目に入り、これはどうしても入っておかねばならぬだろう。って書くと、「ねばならぬ」という言葉の義務的な響きに拒否反応を示される方も少なくなかろうと思うのです。なので、もっともらしい言い訳でもしてみたいと思うのですが、こればかりは見て分かってくれというのが下手な説明よりずっと分かり易いかと思うのです。好きな人は好きに違いないというトートロジーを弄するしかないとは、己の説得術にもう少し磨きを掛けるべきと思うのだけれど、これはやはりどうしようもなく惹かれる人は惹かれるに違いないのだ。外観もなかなか渋いけれど、中華飯店風の真紅の店内の攻撃的であるはずなのになぜかこれ以上ない位の安らぎを感じるのです。刺激的であるのが当たり前な赤に安堵とか安静なんていう微妙な差異を生み出した日本はいい国なんだろうなあ。などという感慨に耽りながら、頼む肴はかつ煮と冷奴なのであります。この空間をけばけばしい色彩で乱したくないなどという気遣いなどありはしないのですが、改めて写真を眺めてみると、この穏やかな色彩の組合せにやはり自分は日本人なのだなあと思うに至るのでした。 嬉しくなって勢いづいてもう一軒。こうして写真で眺めるとどうってことのなさそうなお店ですが、現場でご覧になるとつい誘惑に乗せられてしまうのがお分かりになると思います。「今ちゃん」は、どうしてそういう店名にしたのか、聞きそびれてしまいました。確かにピンキーとキラーズのピンキーこと今陽子を引き合いに出すまでもなく、名字としてそんなに珍しくはないから恐らくは、ここの女将さんは今××さんと仰るのだろうと思うけれど、名字にちゃん付けというのはあまり一般的ではないかもしれない。だとすれば下の名前が「今×」ということになるのかもしれぬけれど、どうもピンとこない。そんなことはまあどうでもいいことです。沖縄風の料理が数品あって、お通しもゴーヤチャンプルーなので、最初、こちらのちょいと豪放磊落な女将さんの生まれを沖縄と推測したのだけれど、しばらくしてぼくにどうしたものか目を付けて、語り掛けてくるのだけれどその会話から宮城県生まれと的中させたぼくの洞察力はなかなか大したものではないだろうか。どうしたきっかけか忘れてしまったけれど、それを言い当てたことから会話は大いに盛り上がり、心なしか、いや確実にお代をお安くしてもらったようです。もともとが安いのかもしれぬけれど、そう思えば格段に気分がいいからそういうことにしておくのです。店の客は常連ばかりで大いに賑わっていて、最初はカラオケが鳴り響いたのでマズイと思ったけれど、それにめげずに居座るとじきに愉快な気分になれるお店です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018/10/16 08:30:09 AM
コメント(0) | コメントを書く
[神奈川県] カテゴリの最新記事
|