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カテゴリ:板橋区
大山の酒場は、スナック寄りに店舗が多いという事実だか偏見だか俄かには断言し辛い指摘をつい先だって書き残してしまったように記憶します。こう書くとぼくがさもスナック嫌いであるかのような誤解を世間に対して及ぼしかねぬけれど、スナックの全部が全部好きじゃないわけではないのであります。スナックにもいいスナックと悪いスナックがあって、いいスナックに分類される店にはかつては足しげく通ったものであります。今でこそさほど足を運ばなくなったのは端的につい長居してしまうスナックよりも、酒場巡りをするほうが楽しいからなのであります。だからこそ酒場巡りの最中にスナック寄りのお店に行き当たると不愉快な気分になるのだ。分かっていたならいいけれど、知らずに居酒屋のつもりが実態はスナックそのものというのは一般的に時間と金銭のロスが大きすぎるのであります。
大山というと何かとハッピーロードばかりが話題に上がるけれど駅の東側には遊座大山なる気の利いた風でどうしても記憶に残らぬ名の商店街があるのだけれど、この通りを無理に持ち上げてみてもいかにも嘘臭い。線路に沿うようにして3本のうらびれた裏通りというか路地があって、戦後のどさくさっぽい呑み屋街の成れの果てみたいな誠に残念な一帯があるのだけれど、ここに「居酒屋 権どら」はありました。店に入る前にそのネオンの下品な過剰な程のキラメキに疑いの目を向けなかったのは、いつもの優柔不断により一向に店を決められず焦っていたというのが理由であるなら、むしろ悩んだりせずに無難な酒場に収まっておけばよかったのであります。しかし、まあ気持ちがブレるなんてことは酒呑みの性癖の典型であるから仕方のない事なのです。さて、戸を開け放った瞬間にシマッたと思うのがこうしたスナック風のお店であります。さっきからスナック風と書いているけれど、つまりはカラオケが必須アイテムであり、ボックス風の低いテーブルとクッション性の高いソファなどの椅子があるのが定番であります。とまあ、それだけがスナックでないことなど分かってはいるがここではそういうことにしておきます。低い座面は腰が重くなるし、店の女の子との距離も近くなった気がする。だったら座敷がいいじゃないかということになろうけれどそれじゃ、足が痺れて仕方がない、なんて言っているのはここがまさしくそういう居酒屋を装ったスナックだからなのだ。だから当然のように警戒警報が脳内に鳴り響くのです。幸いなことに食欲もないからお通しと軽い肴で誤魔化すことにするのです。店の方は、高齢のママさんに外国人らしき女性が2名。まあ、いかにも誘惑的でありますが、この夜のぼくはあくまでも居酒屋使いが目的だから彼女たちのカラオケへの誘いなど振り払えるのです。そして、いよいよのお勘定、ママさんは大山は安くなければ勝負にならぬといったようなことをのたまっておったけれどそんなの鵜呑みにしはいないよと勘定書きを見るとあれあれちゃんと居酒屋価格。ここは中に入るとスナック風の居酒屋ということになろうか。それは良いけれど、なるほどこれが大山のスタイルかなどと思ってならぬのです。表に出ると得体の知れぬ如何わし気で誘惑的な美女の写真が貼り巡らされているし、ポン引き風の兄さんたちも多いのだ。彼らの人件費に財布の紐を緩めるつもりはないぼくはお馴染みの立呑に向かったのです。 まあ、「晩杯屋 大山店」なのですが、いやはや、知らなかった。9時を回るとこんなに客は引いてしまうのか。ぼくの知るこの店はいつだって繁盛していたし、それだけの価値があった気がする。この客の少なさはどうしたことだ。飽きられたのか、ベテラン従業員が他所に回され外固化人ばかりになったからなのか、単に住民が夜が早いのか、いや既に他店にハシゴしたのか、とにかく様々な想像が脳裏を過るくらいにこれまで知るこの酒場とは違っていたのです。厨房に面したカウンター以外はもう客を入れぬらしいし、そもそもそれ以外の止まり木には客の姿などない。予想外の光景に思わず酒を呑むペースは減退し、こちらの将来ばかりが気掛かりとなるのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/09/20 08:30:06 AM
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