気鋭という単語は、大概の場合、新進という単語を伴って用いられるようです。やはり気鋭という単語の意味する「意気込みが鋭い」といったような心構えというのは、心身の若手にこそ相応しいということなのでしょうか。でも大衆酒場の場合、とある酒場を「気鋭の」といった表現で評するとすると、その意味は「鋭敏」といった鋭利なイメージより、酒場という場に対しての腰の据わった思想を携えたという「慧眼」さを意味するように感じられます。気鋭という単語にしっくりこないのであれば、もう少し類語辞典などを参照しつつ的確な言葉に置き換えればいいだけのことであるのでした。でもまあ今日は気鋭という単語を使ってみたい気分だったからこれでいいのであります。
といったどうでもいい前書きはともかくとして新小岩の「大衆酒場 かど鈴」にお邪魔しました。船橋の「増やま」、「増やま 本店」、「若林」、本八幡の「馬越」、「わたらい」といった系列店に連なる一店であるようで、いずれもどっしりと構えた酒場らしい酒場をモットーにしているように思えるのです。つまりは、これぞ酒場というあり様を実に的確かつ忠実に実現していて非常に立派なのであります。ぼくにとってもこの系列は、実にしっかりした思想に支えられており見事であるという上からの評価をすることに一点の翳りもないのです。ところがですね、これまで船橋「増やま」、本八幡「馬越」と「わたらい」とお邪魔していますが、徐々にマンネリに思えてきてしまったのであります。見たところ「増やま 本店」はかなりのオオバコでありますし、「若林」はホルモン焼店としての個性を打ち出しているわけですが、どうも優等生にすぎるのではなかろうかと思えるのです。酒や肴なども呑兵衛好みのツボを押さえており、実に頑張っているのでありますが、どういうわけだが段々飽きてきている自分を意識せずにはおられぬのです。なんというか、酒場なんてのは出鱈目な位でちょうどいいものなんだろうけれど、こちらの場合、生真面目というがちゃんとしようと気張りすぎてるように思うのですね。力み過ぎでちょっと疲れるんですね。もうちょい肩の力を抜いてやってもらえたら、酒を呑む環境としての居心地が気楽なものになりそうです。