|
テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:フランス映画
1920年代。フランス領下のインドシナに暮らす貧しいフランス人の少女・。だが、富豪の中国系青年に目を付けられたときから、彼女の家庭には大金が転がり込んでくるようになった……。M・デュラスの自伝的ベストセラーを映画化。 先日「南京の基督」を観てから、どうしても再見したくなった映画です。 学生の頃初めて観て以来、なんとなく心に残ってきた作品。 いま原作を読んだ後で再見しても、変わらない良さを感じました。 なんといっても、フランスの少女の出で立ちが忘れられない。 黒いヒール、三つ編みに結った髪、男物のボウシ、破れた絹のスカートに真っ赤なルージュ。 どれもボロボロなのに、その美しさのインパクトはとっても大きいものでした。 あの頃は原作も知らず、ただこの幼い彼女が持ってる生の迫力と美に圧倒されたのだけど、原作者デュラスが、自分を自分たらしめるものとしてそれはあったのだと―― わかって更に、好きになりました。 フランス領下のベトナムで生まれ育った主人公。 父を病気で亡くしてからは、貧困のために崩壊した家族とすさまじい暮らしをしてきました。 豊かな暮らしを夢見て母親が買った土地は、水浸しの不毛の地。 財産も希望も失って、精神に異常をきたしつつある母は、上の兄しか愛せないのです・・・ お金の為に富豪の中国人についていった少女。 悲しみはいつものこと。こうなることは母や兄にいずれ求められていたはず・・と思う。 出会った時から、いつも黒塗りの車で彼女は運ばれていきます。 ショロンの中華街で愛し合う時も、学校への行き帰りも。 そして別れの直前までずっと。 サイゴンの寮から、田舎町ザナックの実家へ帰る時。 そこは悪夢のような生活が待っています。暴力と貧困で荒みきって。 けれど、中国人の愛人と過ごす毎日も決して幸せではありません。 幼さの残る主人公が、ぶれない自分を持ち続けてることに心動かされます。 インドシナの蒸し暑い茶色の情景が、あまりに鮮烈に残る作品です。 逢引を重ねるショロンの一室で、鎧戸から洩れるオレンジの光と影、騒がしい雑踏、喘ぎ声。 どれも今でも琴線に触れました。 中国の男が泣いて別れを惜しもうと、気持ちは揺れません。 けど少女の思いは分かる気がする。 フランスへと向かう船の中で、ショパンを聴いた少女がふいに涙を流すシーンに、やっぱり変わらない切なさを感じました。 原作を読んでみると、他の著作と絡む複雑さや、現実とは違う独自の世界観がありました。 でも映画がダメとは思わない。 読むきっかけになったのは、見挟んだ「絶対に映画化できるわけがない!」という強い言葉だったのだけれど。 ジャン=ジャック・アノーらしい雰囲気ある、ある種甘美な映像や、少女を演じたジェーン・マーチも含めて、やっぱり好きな映画です。 マルグリット・デュラス――すごい女性のようです。 映画も撮っているということで、いつか観る機会もあるだろうか・・・ 監督 ジャン=ジャック・アノー 製作 クロード・ベリ 原作 マルグリット・デュラス 脚本 ジェラール・ブラッシュ 、ジャン=ジャック・アノー 音楽 ガブリエル・ヤーレ ナレーション ジャンヌ・モロー 出演 ジェーン・マーチ 、レオン・カーフェイ 、メルヴィル・プポー リサ・フォークナー 、アルノー・ジョヴァニネッティ (カラー/116分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[フランス映画] カテゴリの最新記事
この映画はジェーン・マーチの印象が強いです。他人(つまりジェーン・マーチ)の人生に対する勝手な希望だけれど、この作品だけで女優業は辞めて欲しいと感じるタイプの出演のしかたです。
(2007.06.13 22:46:29)
こんにちは。
切ない話しですね。 私は原作は読んでいませんが、映画は二度ほど観ました。 人は生まれる条件を自ら選ぶことが出来ないわけですが、その生のすべてを受け入れることが出来るまでに心が強く深くなれるか・・・難しいことです。 サイゴンには目を瞠るような美女がやたらといるんですよ。バイクで颯爽と駆け抜ける彼女たちを眺めているだけで、なんとも嬉しく楽しい気分になります。混血の人が多いんですよ。そういう歴史なんです。 それにしてもサイゴンやショロンの様子が「琴線に触れる」というのは、オコ*ジョーさん、なかなかですなあ・・。いつか出かけてみては? 映画には匂いが表現されにくいけれど、どうでしょう? 強烈かもね。 開高さんは書いてたでしょ。 なんならご一緒しましょうか? (笑) (2007.06.14 13:41:27)
こんにちは。
>この作品だけで女優業は辞めて欲しいと感じるタイプの出演のしかたです 印象強いですね。 当時のことを思い出せます。 映画の雑誌を賑わせていた頃。 希望の通り? めっきり観ませんが、やめたわけではないんですね~ 口を開くと印象が変わること、改めて思い出しました。 (2007.06.14 14:59:44)
こんにちは。
切ない話です。 彼女の受け入れた後の諦めと潔さが、生き方として女として、好感持てます。 >サイゴンやショロンの様子が「琴線に触れる」というのは、オコ*ジョーさん、なかなかですなあ・・。 いえいえ・・ 街よりもショロンのあの一室です。 鎧戸から洩れる光、暗い部屋、雑踏の聞こえるその一室です。 でもこのお話は、インドシナが舞台だからこそいいのだと思っています。 異国に馴染んでいるフランスの少女、メコン川。これがフランスが舞台ではこの気持ちは薄れているのでしょうね。 >なんならご一緒しましょうか? (笑) 心強いお言葉です! 子ども連れでは行きにくく思われる国。 でも暫くしたら、置いて行ける年頃になりますね(笑) そしたら色々連れて行っていただきたいものです! (2007.06.14 15:07:16)
この映画の事を思い出して、また観たいな~と
思っていたので、ご紹介興味深く読ませて 頂きました。 映像がとても美しかったですね。 ジェーン・マーチの幼さを残しているのに、 妖艶な魅力、あの赤いルージュのシーン、 鮮明に覚えています。 もう一度、観たくなりました。 魅力的な作品ですね。 (2007.06.14 16:29:59)
こんにちは。
なんとなく忘れられない映画ですね~ 映像も美しくて。 私もすごく久しぶりに観たのですが、感じる切なさはあまり変わっていませんでした。 (2007.06.14 17:30:54)
「南京の基督」から「ラマン」を観たくなるその流れ、わかりますよ(笑)
わたしもこの映画大好きです。 2、3回は観てるかもです。 やっぱりジェーン・マーチ(久しぶりに名前を見て懐かしいです)がいいですね。 少女であり、女である。アンニュイでエロティックですね~。 原作も好きですが、いまのマルグリット・デュラスの写真はいらなかったな(苦笑) (2007.06.14 18:07:18)
>私も確かめたくなってきました!
確かめちゃってください(笑) 彼女がどうしてあの格好してるのか、知って改めていいと思えました。 見る時期も、印象に関係ありありですね♪ (2007.06.14 22:55:33)
>「南京の基督」から「ラマン」を観たくなるその流れ、わかりますよ(笑)
アネモネさんならわかってもらえるって、思ってました♪ >わたしもこの映画大好きです。 きっとお好きだって思ってました♪ >原作も好きですが、いまのマルグリット・デュラスの写真はいらなかったな(苦笑) ----- 「私は年老いた・・・」 って、たしかに! 見る影も・・・ (2007.06.14 22:58:06) |