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カテゴリ:日本映画
明治30年代の信州を舞台に、被差別部落出身の小学校教員・瀬川の苦悩を通して、人権問題を厳しく見つめた佳作。(あらすじ・映画大全集より) 島崎藤村はまだ読んだことはないけれど、略歴を見てみると波乱にとんだ人生を送った興味の湧く人物のようだった。 『若い人』『細雪』『炎上』『こころ』がほぼ原作に忠実だったように、きっとこちらもそうなのだろうと思う。 被差別部落という馴染みの薄い地域での出来事でも、テーマは差別による苦悩という普遍的なもの。 いつの時代でも、主人公・瀬川の心中と純粋さを思えば心を揺さぶられるに違いない。 人間の尊厳、人権、いまでは考えられないような差別が行われていたことに驚きながら、それらの言葉についてつと考えさせられる物語だった。 身分を偽り、露見するのを恐れながらも、部落民開放運動家の猪子蓮太郎(三国)に惹かれ近づいていく主人公の葛藤が見事に描かれている。 部落民もそうでない人も、同じ人間である。そのことを堂々と言える時代は、きっとすぐにはこない。 けれど、猪子の跡を継ぐと決めた瀬川の最後の覚悟と潔さは感動的で、教え子や親友(長門)との別れの場面では、泣けてくる。 『炎上』で初めて知った市川雷蔵は、今回もとても素敵だ。誠実な役柄が良く似合う人。 部落民だと知ったうえで、瀬川に一生付いていくと決めたお寺の娘・お志保(藤村)の健気な優しさ、同僚の親友・土屋との深い友情、猪子蓮太郎の立派な行いもまた、心に染むいいものだった。 猪子の妻を演じた岸田今日子の、ラストの台詞と演技による存在感も忘れてはいけない、素晴らしさ。 全体として美しい作品。 監督/市川崑 原作/島崎藤村 脚本/和田夏十 音楽/芥川也寸志 出演/市川雷蔵 長門裕之 船越英二 藤村志保 三国連太郎 (モノクロ/119分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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