4月第4回‘舟を編む’
4月第4回‘舟を編む’2012年本屋大賞受賞作。本屋大賞が発表されるこの時期、今年の本屋大賞は読みたい予約しても半年待ち状況なので、そういえば三浦しをんさんの‘舟を編む’を読んでないなぁと借りてみました。三浦さんの作品はまほろばシリーズしか読んでなくて、正直なところ、おもしろいけどちょっと軽い感じを私は持っていました。でも、この作品を読んで、三浦さんは、ああ、やっぱり私が思うところの‘正統な小説家’のお一人なのだと思いました。(私のあくまで私見でしかありません...私に言われるまでもないのかもしれないということもあるかもですが。)確かに設定は特殊(辞書を作る編集部なんてなにか一般的ではないですよね)なのかもしれないけれど、そこで生きていく人たちのそれぞれのエピソードはなにか一般的な普遍性のある人くさい事柄。それを読者にちゃんと物語で読ませてくれている。特別、意外な事件や大どんでん返しがあるわけでもなく淡々と日々の人の葛藤を感じさせてくれる。奇想天外な話で読者に今まで思って見なかったことを気づかせてくれる小説も私は好きですが、小説家はなにげない日常の事を物語として読者に読ませ考えさせてくれる人だと私は思っているのです。(そういう小説家を私は‘正統な小説家’だと思っているわけです。あくまで私見です...奇想天外だと思われる物語も実は出発点は日常の事柄で、それを物語へと小説家は膨らましているのでしょうけど)無理に過激な内容にしない、そういう小説を読むのも最近楽しい。肩が凝らない。劇薬でないサプリメントのような物語。あと、‘言葉’に関する捉え方を考えされられた。コロナ禍になっていろいろ考えることがあっても、私の頭の中だと少ない‘言葉’しかなく、なにも先に進まない。‘言葉’を知らないと考えを自分のなかでも消化しきれないことを自覚していました。(それはそれですごいストレスなのです。)‘言葉’で表現できないから考えることを放棄してしまう。(けど、考えて悶々としてしまう...そしてまたストレスが溜まる...)しかし、もしかしたら誰もが‘言葉’の大海原で迷えているのではないかと思わせてもらい、‘言葉’の大海原ですぐに溺れてしまいそうな私でも、とにかくわからないなりに手足を動かすしかないのだと少し思いました。舟を編む [ 三浦しをん ]【中古】 舟を編む(Blu−ray Disc) /松田龍平,宮崎あおい,オダギリジョー,石井裕也(監督),三浦しをん(原作),渡邊崇(音楽) 【中古】afb