3月第4回‘建築家は住まいの何を設計しているのか’
3月第4回‘建築家は住まいの何を設計しているのか’仕事柄こういう本も読みます。正直なところ題名に惹かれて読んでみようと思いました。ただ、読後感は筆者さんもあとがきで述べていたように住宅設計に纏わる小ネタ集だったかなと。ただ、私のように田舎で細々と設計をして普段の建築の常識に頭でっかちになっている身にとっては、ちょっと初心を思い出すようなところもありました。特に前半は良かった。‘建築家’という人はどういう人を言うのかというのは、ずっと私が建築を学び始めた頃からの疑問で、結局その定義とはあいまいで、名乗ったモノ勝ちだと言われるくらい。‘建築家’という資格はないですし。まあ、周囲から‘建築家’と見なされているだろう人がどういう考えで住まいを設計しているのかを覗けるかと期待を持って本書を読んでみて、更に私にとって‘建築家’の定義はわからなくなったかな。ちょっと本書の主旨と違う方向へ思考を巡らせてしまいました。‘建築家’は住まいの何を設計しているのか...それは明確な解はなくてケースバイケースなのかもしれないけれど、ただ、少なくとも、より人が生きやすい環境(それは見て心地良いというデザインかもしれないし、暖かくて涼しいという快適性かもしれないし、どんな雨風や地震にも耐えられるという安心感かもしれないし)づくりに貢献したいという気持ちから発生する‘何か’で、その‘何か’がどれだけ多くの人に寄与するかどうかが‘建築家’とただの設計士との差なのか...なんて思っています。私は多く人に寄与できる‘何か’を考えられないし、‘建築家’にはなれなかったということなのでしょう。本書で一番言いたいのは、現在一般的に常識と思われている住まいの価値判断を一回壊してみましょうということかな。そこに‘建築家’を題名に持ってきて、主旨をわかりやすくしようと思った(?)のかもしれないけれど、あまり上手くは行かなかったような気が私はします。もっと良い題名はなかったのかな。建築家は住まいの何を設計しているのか [ 藤山 和久 ]