8月第5回‘蜜蜂と遠雷’
8月第5回‘蜜蜂と遠雷’すごい。読んで良かった。ちょっと次に何を読もうかと悩んでいるときに、いつも行っている図書館の直木賞受賞作コーナーで目について借りてみました。正直なところ、映画化された原作ということで少しミーハーな感じがしていたし(私は基本ミーハーな人間なのだけども、流行りにはあまり乗りたくないという天邪鬼なところがありまして...)、また(映画のCMを見ていて)題名と設定の音楽の世界がどうにも私の頭の中で繋がらず、加えて田舎育ちで教養のない私にはとんと音楽(特にクラシック)など理解できないので、避けていたのです。でもね、本当に良かった。作品内に出てくる曲がどういう曲なのかサッパリわからなくても(実のところ、一番そこが私にとって拒絶反応があったところでしょう。時々村上春樹さんの作品にジャズやらクラシックの話が出てくると、実は少々冷めてしまいます...なんだろう無教養上の教養への反感というか...3流大学出の一流大学出への反感というか...)音楽を感じられる。そしてそれに包まれる多幸感。確かに今まで生きてきた中で、数えるほどしかクラシックなど生で聞いたことがない無教養な私でも、その時に感じた感動がこういうことだったのかもと思わせます。そういう感動を文章で伝えてしまう恩田さんの文章力に感服しました。(音楽の授業もこういう曲の解釈的というか、どう感じるかというところをもっと掘り下げてくれていたら、私でも少しは頭に入ったかも...)物語は亜夜と塵を中心に、次にマサル、明石そしてその他大勢の人達の成長の群像劇であるわけです。特に芸術(ここでは音楽)に生涯を捧げる(捧げようとする)人達の話で、それぞれの心持はなんとも興味深い。それぞれの立場でそれぞれの成長が伺えます。世の中、どんな世界でも成功者と敗者がいて、ある意味残酷なわけですが、そんな中でこの物語は少しの(遠くの)希望を見せてくれているのかもしれません。この年で敗者な私でも、この物語を読んでそんな気になりました。(ある意味、現実を直視しないあぶないことかもしれないけれど...)蜜蜂と遠雷 [ 恩田陸 ]映画も見てみたくなりました。でも、この原作を映画化するのは大変だったと思います。音を芳醇な言葉で表したものを、その言葉を音楽にした時、本当にそんな感じがするのか...(特に教養のない私がそう感じられる音になるのかどうか...)蜜蜂と遠雷 豪華版【Blu-ray】 [ 松岡茉優 ]