(令和6年5月1日)中日春秋丸写しで一句 ウェディングドレス着たさにレース編む♪
中日春秋 (書写) ウェディングドレス着たさにレース編む ウェディングドレスを日本に定着させたデザイナー桂由美さんは 東京・小岩生まれ。父は役所勤め、母は洋裁を教える仕事で忙しく 、幼いころは シンデレラなどの物語を読み、空想の世界に浸った▼ 高等女学校時代は戦時色が強まり、海軍にあこがれる。「なぜ女性 には特攻隊がないのか。ぜひ認めてほしい」と海軍大臣あてに血判 状を送ったという(『ブライダル革命 桂由美』読売新聞社)▼軍 国主義の浸透が分かるが、納得できないと閣僚にも臆せず書状を献 上するあたり、向こう気の強さを感じる。訃報に接した。なりたい なら、物語のお姫様のようにもなれる―。女性の思いに寄り添い、 和服一辺倒の結婚式を変革した人の旅立ちである▼仕事を始めた19 60年代、ウェディングドレス着用率は3%。普及を図るべく百貨店 にサロン設置を提案したら、売れても着物の売り上げの1割と断ら れ、自分で店を開いた▼女性がドレスを望んでも、和装が当然と思 う姑らの反対で後にキャンセルになることも多々。和服を憎んだの でなく、女性の選択肢を広げたいと願ったが、風習とはかくも難敵 だった▼9年前、産経新聞で「50年のキャリアで一番良かったのは 今。ようやく日本の女性が自分らしいウェディングを挙げられるよ になった」と語っていた。優先されるのは「家」から「個」へ。移 りゆく時代を辛抱強く駆けた。