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ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti@ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2009.10.10
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墨東綺譚改版

「墨東綺譚」は、かなり昔に読みました。高校生の頃かしら。
永井荷風という「すごい作家」がいて、その代表作、というからです。
でも、
どこがいいんだか、まったくわからずじまいでした。
「読んだ!」
それだけ。

でも、高校生にわかったらそっちのほうがおかしい。
くら~い娼窟の雰囲気と、エロおやじですから。
人生のやるせなさ、人間の弱さ、男と女の不可思議さ。
そんなもん、わからないのが若さってもんです。

「哀しい女の物語」として見たって、
若い娘はそーゆーの、キライ。
もっと自分を持って生きようよっていう感じになっちゃう。

だから、
映画になったって、イマイチ食指が動かん。
ポルノでしょ、結局。っていう感じ。



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永井荷風役に津川雅彦、
お雪には墨田ユキを抜擢。
大胆濡れ場があるということで、この起用はものすごく話題になりましたが、
女性の私から見ると、「ほら、やっぱポルノ路線じゃん」。
だから見ませんでした。
ただ、
私、この新藤兼人の脚本、持ってるんです(「シナリオ」1992年4月号)。
今回TMAの試演会を見て読み直したんですが、
やっぱ年とると(笑)見えてくるものがちがいますねー。
新藤さんが、この映画で描きたかったものもよくわかった。
彼は「性」というものを非常に重視しているのだけれど、
「性欲は創作欲に通ず」という永井荷風の言葉に、ものすごく共感しているのね。
そして、
性欲の衰え=創作欲の衰え=生きる意欲の衰え=老人の孤独死」と
ものすごくリアルなんだわ。
それから、
老い先短い自分が、お雪のような若い女の未来を束縛しちゃいけない、と
ひるむ場面もある。
でもその一方で、
「極楽」としての玉の井にあってこその「お雪」であり、
こっち側に引き込んだらお雪幻想も消えちゃうんじゃないか、という
男のエゴも、ちゃんと匂わせている。
女をあがめつつ女を自分と対等には扱っていないんです。

杉村春子と乙羽信子が出ています。
そういうのが「すごいなー」って思っちゃうようになってしまいました。

これより前にも、
映画化されているんですね。



墨東綺譚(DVD) ◆20%OFF!

お雪、山本富士子です。
こちらの映画も未見です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

TMAでもやった菊田一夫脚本の舞台版「墨東綺譚」は、
1991年と1992年、帝国劇場でやっています。
いずれも主演は浅丘ルリ子。

ここで注目したいのが、浅丘がお雪と千代美の二役である点。
そこでラストのセリフ
「お雪を書きながら千代美を思っていた」が生きてくるわけです。

「昼は貞女、夜は娼婦」が殿方の理想だってよく言いますけど、
新しい女、古いタイプの女、
耐える女、自己主張する女、
女性はいつも多面体。
いつもの顔とは違う表情にハッとする、それこそが、
恋の妙味かもしれません。

こうした映画化、舞台化をするときは、
みな「墨東綺譚」だけでなく、
同じく荷風の手による「断腸亭日乗」も参考にしています。
菊田さんの脚本は、
荷風が「断腸亭日乗」にあるさまざまな女の生涯をお雪一つにまとめたものを、
逆にいくつもの女に新たに振り分けていった感があります。



断腸亭日乗(上)

昨日、
「種田のずるさが描かれなければ、この物語の核心は見えてこない」
と書きました。
「少なくとも、現代性は」とも。

「玉の井は極楽」という描き方は、実は非常に不公平なのであります。
玉の井で、女は売り物です。
売り物の女に「お前ほどいい女はいない」と言っても、
それは男のポーズでしかなく、
その「女」とは、無責任に買ったり捨てたりできる「女」でしかないのです。

その対極に、種田の妻がいます。
「男より頭がよく、地位もある女」は始末に悪い、と種田は言います。
実家を鼻にかけ、夫を見下して、一緒にいられない、というのです。

でも、
玉の井で種田がいい思いをしているのは、
ここでは種田が「女より頭がよく、地位もある男」だからでしかありません。
もし妻より自分のほうが「頭がよく、地位もある」男であれば、
きっと満足しているでしょう。
妻を支配できたから、満足するだけで、そこに愛はありません。

お雪のことだって、本当の意味で「愛している」と言えるのでしょうか。
「お前といると、気持ちが和らぐ」は真実でしょうが、
妻ときちんと別れようともせず、
職にもつかず、
いまだに独身だとウソをつき、
エロ本の作家だというお雪の思い込みをいいことに、
自分の身の上はまったく話しません。
お雪が行方をくらましてくれて、きっとほっとしているでしょう。
「女房とは別れる」と言っているけれど実は恐妻家。
そんな男です。

今の世の中、こんな男は通用しません。
種田を「やさしい人」「実のある人」と描くだけでは
玉の井がどこまでも男の幻想の地で終わってしまうのです。

そこに男たちが「逃げ込んだ」という現実が
どこかに描かれていて初めて、
この物語はバランスが保てるのだと思います。
とはいえ、すでにセリフの量は決まっていますから、
表情やしぐさがとても大切ですね。

種田は当たりはソフトであっても、
ヒモの重吉とそれほど変わらない男なのであります。





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Last updated  2009.10.10 23:46:38
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