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カテゴリ:TV・ドラマ
私の「人形劇」歴は長い。
なんてったって「チロリン村とくるみの木」からである。 ほぼテレビ文化の草創期からのおつきあい。 「チロリン村」といわれて黒柳徹子が浮かんでくる人も ずいぶん少なくなっていることだろう。 人形がでんぐり返しをすると、腕時計をした人形使いの手が見えて、 子ども心に現実に引き戻されてしまった瞬間を、 今でも鮮明に思い出すことができる。 「ひょっこりひょうたん島」は、ほぼ全部見た。 「見た」ということは、リアルタイムだという証拠である。 まだビデオというものがなかった。 スタジオの収録さえも生、 収録テープも高価なため使いまわしで映像がほとんど残っていないのだから、 ライブと同じく、同時代人だけの共有財産といえよう。 もっとも燃えたのは「新・八犬伝」かもしれない。 一回目のファースト・シーン、 「ここは大塚。今でこそ都会ですが、このころは一面のすすきの原、 さびしい場所でした」という 坂本九のナレーションをバックに、 女性姿の犬塚信乃の人形が、その背丈もあろうかというすすきの間を歩く場面。 なぜか、とてもはっきりと覚えている。 何度もいうが、ビデオがなかった時代。 見逃すまいと毎日6時半にテレビのスイッチを合わせていた。 (人形劇の時間は、「ひょうたん島」の頃は17:45始まりだったが、 調べてみると「新・八犬伝」は18:30始まりだったようである。) 「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌!」「玉梓(たまずさ)が怨霊~」 「因果はめぐる糸車」「さもしい浪人、左母(さも)二郎~」など、 講談がかった坂本九の語りが耳に心地よく、 心沸き立つひとときを送ったものだ。 それまでは「ひとみ座」など、 どちらかといえばファンタジックな人形が続いていたところ、 辻村ジュサブローの「こわい顔」の人形のイメージは鮮烈で 「人形劇」が子どもだましでない、と感じて 多少長た自分も照れずに見続けることができたのだと思う。 1970年代、 ホームビデオはまだなかったが、 ドラマは生放送ではなくなり、ドラマの再放送枠もあった。 「新・八犬伝」はそんな1973年に作られたにも拘らず、 「ひょうたん島」同様収録テープがほとんど消去されてしまっている。 これは、驚愕すべき事実である。 なんという、文化の喪失! 草創期より、テレビは「電気紙芝居」と言われ、一段も二段も低く見られ、 使い捨ての手なぐさみとしか考えられていなかった。 そんな状況にありながらも、 テレビを作っていた人たちは子ども番組であれ何であれ、 情熱と全精力を傾けて作ってくれていたのだ。 今のテレビドラマ(特に民放)の安易な作られ方を見たら、 あの頃、映画や新聞に負けるまいと必死で戦っていた方々は、 どんなに落胆することだろう。 「ひょうたん島」はその全放送を克明にノートに記録していた一少年の情熱で 再現することができたが、 八犬伝に関しては、映画版の再上映運動が起こっている。 (詳しくはこちら→http://homepage2.nifty.com/starship/index.htm) みな、熱かった。今でも、熱い。 それが、私たちテレビ文化で育った同時代人だ。 なんといっても、その「映像」は私たちの「頭の中」にしか残ってないんだから! ちょっとしたウィニー状態。 本家本元が「消去」したって、共有状態は永遠に続くのである。 その後、「プリンプリン物語」「真田十勇士」「三国志」など 名作が続いたが、 この頃はすでに「夕方帰宅」が困難な年齢になっていたこともあって きちんと見ることなく今に至る。 このように、 それぞれの子ども時代をそれぞれに彩った「平日の夕方6時」の人形劇が、 十数年ぶりに復活する。 脚色に三谷幸喜を迎えての「三銃士」。 原作はいわずと知れたアレクサンドル・デュマで、 NHKではアニメも放送したことがある。 (こちらはけっこうよく見ていたな~) 名作を今をときめく脚本家が料理する、といった恰好だ。 決して「子どもだまし」で終わらせないぞ、という 制作サイドの意気込みが伝わってくるようだ。 毎回たった20分という、朝の連続ドラマ並みの細切れなのだが、 かなり中身は濃いとみた。 初回はまったく飽きさせず。 声優にも貫地谷かおり、瀬戸カトリーヌや山寺宏一、戸田恵子などを迎え、充実の面々。 人形劇というのは映画のアフレコやアニメのアテレコと違い、 まず声を録音して、 その声に合わせて人形を動かすのだという。 俳優たちも思いっきり力を出せると喜んでいる。 スタッフもキャストも、 ノリノリで作っている現場に情熱を感じる。 この番組宣伝の番組で、かつて「三国志」に携わった人が 「毎日終わると午前3時くらいで、三国志じゃなくて残酷史だって言ってたんですよ」 「本当に火や水を使って、人形を操作する者は火の粉をかぶりながらやっていました」 などと、うれしそうに語っていたが、 プライドと進取の気象で取り組んだ作品は、絶対にいいものに仕上がるんだな、と 改めてアーティストたちの心意気に敬服。 「見る」側から「作る」側にも足をつっこんでいる今は、 大作を20分の細切れでどうやって作っていくか、 次の日までどうやって視聴者を引っ張るのか、 そのあたりも知りたいところだ。 最大のネックは、やはり「夕方6時」か。 私のような大人だけではない。 こういうホネのある物語にもっとも接してほしい小学生だって、 塾通いかなんかで家にいない時間なんだろうな~。 ただ、 以前とちがって家には録画機器がある。 それも同じ時間で撮りだめする機能付だ! そうなると、 あとは録画してでも見続けようという「情熱」? 撮りだめして安心しないように、気をつけなくっちゃ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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