【映画の内容に触れますので、お読みになりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
ルイ16世との関係を、現代の普通の夫婦のように
様々な危機を乗り越えながらだんだんと和してゆく過程を
丁寧に描いているのも好感が持て、
ラストがとても説得力のあるものになりました。
家族をテーマとしてみると、子育てに突入した母親として、小さな館に居を移した
アントワネットの行動は理にかなっていたなと。農家の真似事をすることさえ、
大変な浪費と批判された向きもあったようですが、ハーバルな生活は
もともと大菜園を持っていたヴェルサイユのしきたりの一環でもある上に
故国オーストリアで自らがゆったりと育ったものと同じやり方が
規則にぎりぎりと押し込められた宮廷生活よりも子供の情操教育、
健康にとってよいのは明らか。
古の日本の皇室でも、御所で育つ皇子たちがほとんど成人しなかったため
農家や武家に里子に出して、丈夫に育てたという経緯があるのだそう。
第一皇子が病弱だった故に、余計にその思いは強かったのではないかと。
(宮廷での菜園や花々の育成の伝統は、その後のフランスの女主である
ナポレオンの妻・ジョゼフィーヌにも受け継がれ、
種目収集、品種改良などを経て「薔薇図鑑」に結実します。
世界に名だたる農業国、ハーバリストも多数擁するフランスの礎つくりにも
貢献していますね。)
タンプル塔に幽閉されたときも、世話役になった人々は、実際に会った彼女を
好きにならずにはいられなかったとのこと。身に纏うものすべてを失い、
国の、時代のスケープゴートになって散り行く間際にも、本当の輝きは色褪せないもの。
ラストは真の王妃への階段を昇るさまを観客自身に描かせる、余韻あるものでした。
読んでいただいてありがとうございました。
「世界一の薔薇園が満開・薔薇の皇后」
「マリー・アントワネット公開前夜」
「マリー・アントワネット観賞1・幸せの色」
「マリー・アントワネット観賞2・セレブリティの条件」
「ロココ三様・まずは本物を」
「ロココ三様・女王の作り方」
「ロココ三様・源流から前衛まで」
「エリザベスタウンを観賞」
「欧州鉄道の旅・ヴェルサイユ」
「フランスの薔薇・マリー・アントワネット」
「オペラ座の怪人・ベルばらとの共通項」
「マリー・アントワネットHP」