前回のつづき
https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202302270000/
前回は何らかの物質の濃度が高いと浸透圧の関係で象牙細管中のリンパ液が歯髄内から口腔外に引っ張られるので沁みるというお話には異論はないのですが、
肝心の「なぜ沁みるのか?」というのが分かってはいないのです。歯根(象牙質)が露出していても沁みない歯の方が断然多いわけですから。
昔、歯学部の講義で、ひどい歯周病に罹患してグラグラになっている歯の歯髄が壊死しているケースがままあり、これを「上行性の歯髄炎」というと習った。
どういうことかというと、根尖口から細菌が歯髄方向に侵入し(つまり上行し)、歯髄炎を起こす、と。
しかし、臨床経験的には壊死しているのは末梢である冠部歯髄で根部歯髄はまだ生きていることが多いのだ。しかも細菌が虫歯の穴から歯髄に侵入している時のような激痛を感じているわけではない。
知覚過敏はある。
歯髄の血管は細いのだが、根尖から入って根尖から出て行く。立派な動静脈網を形成していて、冠部歯髄の血管は末梢血管ということになる。
これらのことから考えられるのは、細菌が根尖から侵入するというわけではなく、グラグラしているので根尖付近の血管が損傷し、血栓や血管壁のデブリが剥がれて末梢である冠部の毛細血管に詰まって塞栓症を起こしていると考えるのが自然かもしれない。ちょうど脳梗塞のような感じだ。強い痛みは感じないことからもなんとなく類似性を感じる。
ただ歯髄炎を起こしているので冠部歯髄腔の内圧は亢進していると思われ、知覚神経を圧迫しているので、痛覚の閾値は下がっている。これが知覚過敏症の原因と思われる。