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カテゴリ:千葉県
東海神の目指す酒場を角にする一角は、JR船橋駅から十分弱というのにとてもここがそんな開発の著しい町のそばにあるとは思えぬ程に田舎臭い通りに面しているのであります。船橋駅のかつてはえげつない呑み屋や風俗店が密集したエリアからはほぼ一本道で繋がっているから恐らくそう遠からぬ昔には船橋駅から東海神駅近くまでは数多の酒場が蔓延っていたのだと思うのです。今では大分店舗の数も減り、空き地や新築のアパートなどが目立っていますが、ともかくもうすぐ開店となるはずの酒場を見やると、そこだけは戦後をそのままに引き摺っているように感じられるのです。
日も暮れて店を囲むように飾る提灯に明りが灯ると、それまでは存在感がいかにも希薄な感じで、現役でありこそすれ、ちゃんと時間通り始めてくれる店か半信半疑だった「大衆酒場 松むら」が一気に活気を放つのです。遺産でガラス戸を開け放ってみると賑わいは表だけで店内は静謐なムードで寒々しい位で、一人で訪れていればこの上ない寂寥感に満たされ恍惚とした気分に陥ったかもしれません。取り急ぎカウンター席に腰を下ろすものの店のオヤジはむっつりと背を向けて焼台からわれわれへと視線を向けようとしません。これは雰囲気は抜群だけれど、オヤジはやさぐれ系でとっつきにくいタイプの店だったかと慎重な振舞い方を余儀なくされたのであります。取り急ぎチューハイにもつ焼を適当に見繕って注文したけれど、どうも不愛想でつっけんどんな印象です。それはわれわれに限ったことでなくやがて持ち帰りの窓から若い女性たちが買い求めに来てもその不遜とも思われる態度は変わらぬのでありました。でもこれって単なるツンデレ系だったのですね。お話してみると口は少々悪いけれど、よく喋るし案外可愛げのある笑顔を浮かべもするのでした。きっとこんなことを言ったら「バカいってんじゃないよ」と叱られそうですが、その眼の奥は少し嬉しそうであるに違いないのであります。アスパラ天ぷらなどの日替わりの肴も案外モダンなセンスが感じられたりして、やはりここは東海神に行ったら行かぬわけにはすまされぬ酒場なのでありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020/03/10 08:30:06 AM
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