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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イギリス映画
映画館へ行きました。『運命じゃない人』がなかなか良かった内田けんじ監督の『アフター・スクール』を選んだのですが、満席で入れず。シネコンには他に観たいものが見つからなくて、駅から近くのミニシアター蠍座で『ヴィーナス』を観ました。 主演は『アラビアのロレンス』のピーター・オトゥール。 (あらすじ) 70代の英国人俳優モーリス(オトゥール)。若い頃は数々の浮き名を流した人気スターも、いまや回ってくるのは端役ばかり。私生活でも妻と別居し独りで暮らす日々。そんなある日、モーリスは俳優仲間のイアン(フィリップス)のもとにやって来た彼の姪の娘ジェシー(ウィッテカー)と出会う。乱暴な口を利き、無作法きわまりないジェシーだったか、モーリスは若くて美しい彼女に年甲斐もなく心ときめかせてしまう。そして、ジェシーに手を焼くイアンに乞われて、何かとジェシーの相手をするモーリスだったが・・・。 なんとも微妙な映画でした。すっかりおじいちゃんとなったオトゥールが、50歳も年下の若き女性に最後の恋をする物語。 娘ジェシーがまたバカっぽくて(いやほんとに)、そんな娘に惚れたモーリスの気持ちも魅力もわからず、なんだかノレない。 下心みえみえのおじいさんに感情移入できるわけもなく、騙されたり、色仕掛けに負けたり、コピーの男って、いくつになっても…。が溜め息となってそのまま残ります。 死ぬ前に、もう一度トキメク恋がしたいと願う元人気スター。老俳優とはオトゥールの地でいける設定です。しかし今生で最後の恋がこんなんでいいのだろうか・・・。 せめて主人公が魅力的でないと。観る側は蚊帳の外状態で、なんかやってるわ~としかならないではないですか。 老いらくの恋だっていい、歳の差があったっていい。でもそこに惚れるわけがないとね。若けりゃいいのか?ということになってしまいます。 田舎からイアンの身の回りの世話をするという理由で、都会に出てきたジェシーは、後から明かされる苦い過去を持っています。雑誌モデルの仕事を探していますが、実際には努力ひとつしないままダラケタ日々を送るだけで、イアンとは犬猿の仲。 そんなジェシーにモーリスが紹介したのは、美術学校の裸婦のモデル。戸惑う彼女を連れて観にいったヴィーナスの絵画と、彼女をこの愛称で呼んだことが、タイトルの由来となっています。 老人がたくさん持っている知識を与えたい、若者を成長させたいと願う気持ちはとてもわかります。でも美でも本でも生き方でも、中身のないシーンばかりで表面だけで通り過ぎていくのが気になります。 全体としていろんなところが中途半端。 親友の俳優仲間イアンとの関係は後半にきて突然釈然としないものとなり、モーリスの病を受けてジェシーが変わっていく様子も、過去の傷にもまた心動きません。 死を前にした逃避行の行き先は、やはり海。 定石どおりなのはいいとしても、脚本がいまいちな感は否めません。 せめて主演ふたりを素敵に描いて欲しかった。魅力ある人物に!そこに尽きます。 老体に関するギャグは、たいがい面白いはずなのに微妙に笑えず。イギリス人はギャグがお下手なのかしら。『スペース・カウボーイ』なんか今でも思い出すほど面白かったのにー。 わざわざ劇場で観ただけに残念な作品でした。 余談に、オトゥールの魅力について。 『アラビアのロレンス』で見せてくれたグリーンの美しい瞳は、あまり面影がないようでした。そういえば、彼より首長を演じたオーマ・シャリフの方が好きだったので、たんんに好みの問題でもあるのかもしれませんね。 ただこの年アカデミー主演男優賞にノミネートしたそうですが、狙えるほどの演技だったとは思えませんでした。 めずらしく酷評を書いている気がする・・。 監督 ロジャー・ミッシェル 製作 ケヴィン・ローダー 脚本 ハニフ・クレイシ 撮影 ハリス・ザンバーラウコス 音楽 コリーヌ・ベイリー・レイ 出演 ピーター・オトゥール レスリー・フィリップス ジョディ・ウィッテカー ブロンソン・ウェッブ リチャード・グリフィス ヴァネッサ・レッドグレーヴ (カラー/95分/イギリス/VENUS) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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