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カテゴリ:ヘーゲル思想と教育
ヘーゲル思想と教育 1
ひとことで言って「教育とは子どもたちの成長を促していく営み」いえるでしょう。 ただ、そもそも人間の行動(行動傾向)や成長についてどのように理解するのがいいのでしょうか。 理解するときの枠組みとして例えば「刺激→反応」といったモデルを含む「原因→結果」のつながり(「因果律」)として理解しようという考え方があります。 (古典的な心理学においてこの図式はよく用いられました。) それに対して ヘーゲルは人間の意識(精神)の活動に注目して「弁証法」という「運動・発展(成長)の理論」を提唱したのです。言い換えれば、人間の意識(精神)の活動を「原因→結果」のつながりよりもはるかにダイナミックなものとして理論化したのです。 ヘーゲルの主著『精神現象学』は副題が「意識経験の学」となっていることからもわかるように、人間の意識がさまざまな経験を積み上げ大きく成長していく様子を描いています。 この書は「弁証法の永遠のふるさと」(竹内芳郎)であるといわれたり「意識の成長物語」(西研)であるといわれたりするわけですが、それは何を意味するのでしょうか。 簡単に言えば、意識はものごとを認識したり、他者と争ったり相互に承認したり、といった様々な経験をつみ、それを反省すること(振り返ること)をくりかえし行いながら視野を広げ、成長していくということです。 例えば、U高校の実践でくりかえし紹介したS子は「挫折感を持ってU高校に通学し、はじめはクラスメートと交わろうともしなかった」のですが、「赤点学級」や「U高祭」の取り組みを通して様々な交わりを体験し、仲間を「再発見」していきます。 そして「U高校を最終学歴から消したい」という発言に対してKさんから「そのような考えを乗り越えていくためにこそ色々な取り組みをしてきたのではなかったのか、自分の高校生活は何だったのか」という強烈な“問いかけ”を受けることで、あらためて自分自身の体験を振り返り、U高校が自分にとって持つ意味を「意識化」し「言葉」にしていったのです。 (このような自己意識の活動の根底には「自分自身を自立した存在として受け入れ承認したい、他者からも承認されたい」という願いが存在することをヘーゲルは洞察しています。) さて、このような体験の積み上げによって人間は「自己を社会的な存在として自覚することになる」とヘーゲルは言います。 彼によれば「人間は育っていくに従って、(・・・)自分自身の何であるか、自己と社会の関係の何であるかをいっそう深く知っていくようになる。 子どものころは誰でも自己中心的な世界像を持っているが、大人になるに従って、大なり小なり自分の存在が社会によって支えられていくことに気づく。そして、そういう認識が適切にたどられれば、誰しも自己を社会的な存在として自覚(・・・)するにいたるだろう 。」 (竹田青嗣『現代思想の冒険』) 「そういう認識が適切にたどられる」ように促していくことが、教育の大切な課題のひとつだといえるのではないでしょうか。 ご訪問いただきありがとうございます。ワンクリックしていただけるともっとうれしいです。 ↓ (教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.03.23 19:53:16
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