『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー (著), 村上春樹 (翻訳) 早川書房
超有名なハードボイルドの古典を、初めて読んでみようと思ったのは、図書館でこれを見かけたから。なんで今まで読まなかったかと言うと、男性が、それも割と年配の方がうっとりと憧れの存在としてフィリップ・マーロウの名を口にするので、私なんかは内心引いてしまうのだった。だけど、この3-4月はここしばらくなかったほど根を詰めて仕事したことだし、自分の好みと違うものをあえて読んでみたくなった。この村上春樹 の翻訳というのも、単行本で出たときにはすごく話題になったと記憶している。ロング・グッドバイ軽装版私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫、テリー・レノックスと知り合う。そして2人の間には友情が芽生え・・・。読み始めてしばらくして「あ、しまった」と思った。私にとってはあまり居心地のよくない世界。(読む前から、そうだろうとは想像してたけど・・・)なんでかなあ。‘男の美学’みたいなものに共感できないからか。登場人物が、男性はみな味があるのに、女性は妙に透明感があるというか、重要な位置づけなのに存在感が希薄。村上春樹の自作の文章でもあるかのような、さりげないテイストはなかなか気に行った。これで熱かったりしたら、ちょっと大変だった。ことの収まりは推測できたものの、ミステリとして‘落ち’を楽しむというより、フィリップ・マーロウという主人公を味わう小説だと思う。「ギムレットにはまだ早すぎるね」とテリー・レノックスがフィリップ・マーロウに言う。有名なセリフ。ギムレットってこういう男たちが飲む酒だったんだ、と改めて思う。。。‘To say Good bye is to die a little.’バイブルのような清水俊二氏の有名な訳では、「さよならを言うのはわずかのあいだ死ぬことだ」となっているけど、村上春樹は「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」としている。村上春樹の方が乾いてる。・・・古い友人に会いたくなりました(笑)。長い間会わなくても、友人は友人なんだけどね。