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テーマ:おすすめ映画(4019)
カテゴリ:洋画
連合軍が収容所を解放した時、すぐに出ようとはしなかったという。 「彼等はおずおずとあたりを見廻し、問いたげにお互いの目を見合わせるのであった。 それから…(中略)…最初のおどおどした一歩を踏み出すのであった」 (フランクル「夜と霧」より) もはや、逃げ出したいという欲求さえ奪われていた、という言い方が正しいのかもしれない。 私は「夜と霧」よりはやく、このシーンを「遥かなる帰郷」で目撃しました。 この映画の主人公の実在モデルであるイタリア人プリーモ・レーヴィは、 フランクルと同じく、収容所から生還した一人です。 ユダヤ人ではない収容者はたくさんいたのです。 私が一番好きなシーンは、 一人のソ連兵が、フレッド・アステアのまねをして、音楽に合せ踊るところ。 窓越しにそれをじっとみつめる解放された人々。 収容所を出たからといって、すぐに精神が回復するわけではなく、 彼らは帰郷の道すがら、ずっと無表情です。 ところが、このソ連兵の気楽なダンスと音楽によって、ある変化が訪れます。 男達は、無言で女達をダンスに誘うのです。 暗がりでの強姦ではなく、ダンス。 心と心が触れ合う日常が戻る一瞬。人々の瞳に光が、口元に笑みが蘇えっていく…。 音楽が、ダンスが、私たちの心の幸せの素だと実感できる場面です。 これはプリーモ・レーヴィの自伝的小説「休戦」の映画化です。 解放から40年余りたっての映画化を彼は許可しましたが、映画の完成を見ることなく自殺しました。 その事実は重い。 けれど映画はプリーモがまだ希望を信じていた頃を映し出していて、 どこか清々しく、桃源郷の霞の中を歩くような感覚を覚えました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.04.08 08:41:57
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