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カテゴリ:熊川哲也とKバレエカンパニー
CNNのドキュメンタリー番組「Revealed」に特集された熊川哲也について、
ウェブサイトに載った3人のキーパーソンに対するQ&A(オンエア以外のものも含め)を 熊川哲也の英国ロイヤルバレエ団退団の真相」に焦点を合わせてご紹介してきました。 今回は、退団にまつわる話から少し離れて、 現在の状況を、彼がどう思っているかについての部分を書こうと思います。 昨日の続きと思って読んでください。(例によって、いくつかの質問は省略してあります) ―日本の観客は、(Kバレエを)始めた頃に比べて変わりましたか? 「客層は広がりましたね。男性客も増えてきた。 以前は99%が女性だったのが、今は8割ご婦人2割殿方っていう感じかな。いい数字だと思います。 僕はコヴェント・ガーデンで育ったでしょ。 あそこではご婦人はドレスアップ、殿方はボウ・タイ姿。そこが一種の社交場だった。 でも、日本へ帰ってみたら、いわばロック・コンサート状態。 女性はキャーキャー叫んでるし。僕が考えてるものと違うな、と。 でも『そんなの関係ネェ』。 劇場は満杯だし、僕たちはどんな状態でもやれるだけの最高のパフォーマンスをした。 そうして、物事は少しずつ変わっていったんです」 ―あなたの教え子たちには何を伝えたいですか? 「自信ですね。それから、本当のこと。 彼ら(のパフォーマンス)がよくなければよくないと言わなければ。ウソはつきません。 次(のパフォーマンス)がよければ、いいというし。でも、 どうやったらいいダンサーになれるか、というアドバイスはできません。 僕自身、どうしてこういうダンサーになれたか、わからないものですから」 ―つまり、才能というのは、教えられないものだと? 「芸術っていうのは、難しいですよ。 よく、『ダンサーになるために生まれてきた』っていうじゃないですか、 絵描きになるために生まれた、建築家になるために生まれた、などなど。 たしかにそういう人たちは、生まれた時から資質がある。でも、 それを外に出すためには、ものすごい訓練が必要なんです。 僕は、今よりよくなるように教えられる。 ある程度のレベルまでは教えることができる。でも、 それ以上の部分は、もうその人がすでに持っているものなんです。 そうだね、 だから僕は、彼らにヒントを与えるって感じかな。 彼らの持っているものをよりよくするために手を貸すんですよ。 ―今回のケガで、どんな影響があなたにありましたか? 「それはもう、いろいろ。 ダンサーとしてだけ言えば、このヒザのせいで、今踊れないということ。 芸術監督の立場で言うと、 僕みたいなスター・ダンサーが舞台に上がれないことで、 チケット・セールスに深刻な問題を抱えていることが大きい。 だから、いろいろです。 まあ別の見方をすれば、これも一つのチャレンジ。乗り越えがいがあります」 ―ステージが恋しいですか? 「もちろん。僕はダンサー人生、あきらめてないですよ。 舞台に復帰するのが楽しみでしかたがない。 次にステージに上がった時は、おそらくその気持ちが噴出するでしょうね。 それまで、この舞台に上がりたくても上がれない気持ちをためこんで、 復帰の舞台で大爆発させたいですよ」 ―クラシック・バレエがそこまでお好きな理由はなんですか? 「ずばり、音楽がいいから。こんな素敵な音楽を作った偉大な作曲家たちのおかげです。 チャイコフスキーは素晴らしい。クラシック音楽を聴いていると、自然の中にいるみたいです。 癒しでもあるし、ワクワクすることもある。 もちろん、(バレエが好きなのは)すばらしいダンサーたちのおかげでもあります。 アンソニー・ダウエル、ヌレエフ、バリシニコフ…みんな僕のヒーローです。 彼らはいくつもの役を踊ることで、 チャイコフスキーやモーツァルトやバッハやリストや、 そういう大作曲家たちと一緒に仕事をしてきた。 それが、僕がクラシック・バレエが大好きな理由です」 時代を越えて、何百年も生き続けている古典芸術。 「古典をやるということは、 自分がチャイコフスキーのような偉大な音楽家と一緒に仕事ができるということ」と、 熊川はことあるごとに言ってきました。 バレエダンサーという、 限られた時間の中でしか輝けない運命を背負った職業に天分を持った男が、 その中で最高のパフォーマンスを追求しながら、 一方で「永遠の命」としての芸術のあり方をも模索してきた。 そして、古典が永遠性を持つに至ったその真髄に敬意を払いつつ、 自分らしくコラボレートすることで、 「熊川哲也」というバレエ人も古典の仲間に入りたい。 それが、 彼の究極の望みなのだと私は思います。 これで、CNNドキュメンタリー番組「Revealed」のウェブサイトインタビューの紹介を終わります。 長いことおつきあいくださり、ありがとうございました。 いくつかの質問はカットしましたのですべてではありません。 時々意訳をはさみましたが、 できるだけ原文に忠実に訳したつもりです。 「です、ます」など、文の調子は、CNNのインタビュー映像に見る雰囲気や、 熊川さんに関しては、日ごろの語り口を参考にしました。 素敵な答えを導き出してくれたCNNのインタビュアーさんに、 心から感謝したいと思います。 長いこと熊川哲也を見てきた一ファンとして、とても心に響くインタビューでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.12.24 10:49:29
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