今が生死

ハツユキカズラ・ジューンブライド

本日午前中大腿骨頸部骨折で入院していた８９才男性が退院した。骨折の方は手術後３か月経過しており退院は予定通りでOKだが、問題は慢性の呼吸器疾患と老衰からくる食欲不振であった。整形外科的には退院の期限がきたが食欲不振のために点滴をしており、かつ慢性肺炎に対して抗生物質の点滴もしており、普通では退院できる状態ではなかった。しかし息子さんが２週間の介護休暇をとったということと在宅クリニックが点滴などの管理をしてくれるとのことで本人が熱望していた自宅への退院が実現した。
息子さんの２週間の介護休暇中にお亡くなりになるかも知れないし、２週間過ぎても命を長らえることもあるかも知れない。いずれにしても本人があれだけ望んでいた家に一旦帰れることになって上気したあの嬉しそうな顔は忘れられない。「もし２週間以内でも手に負えないようでしたら私が引き受けますので帰ってきてよいですよ」と家族には告げた。
大勢の患者さんを受け持ってきたがこの方ほど帰宅願望の強い方はいなかった。私はそれを叶えてやりたいと思っていたが、ケースワーカーなどは「痰がからまることがあり、家族にその吸引ができますか？！」と退院は無理との考えを示していた。しかし皆さんの努力でさまざまな困難を乗り越えて退院できることになり本当に良かったと思う。退院後数日でまた病院に戻ってくるかもしれないが１日でも２日でも家に帰れれば患者さんも私も満足である。。