50代女性、左下6、歯根破折
この歯は12年程前、CKが脱離したということが初診だった。あれから12年、来院が途切れていたのだが、強い口臭が気になるということで今回来院された。
神経を取る治療を受けると、概ね60歳前後でPer、歯根破折、歯周病様の症状で抜歯になり、入れ歯が入り始める。一旦入れ歯が入ると、次々に歯がダメになり入れ歯が大きくなり、特に咬合性外傷があると早期に総入れ歯になってしまう。
たとえ歯根破折でもなるべく抜歯せずに、入れ歯、ブリッジ、インプラント等の欠損補綴は先送りするべきだ。
それぞれに欠点があり、様々な問題が噴出し、トラブった挙句にやはり入れ歯になるのは避けられない。
今日は抜歯した歯根を綺麗にして接着して再建するまでだ。
近心根は綺麗に縦に割れている。根管充填材と根管壁との間には黒色のFeSが沈着している。これは硫酸塩還元細菌が侵入していることを表している。緊密充填と言いながら理想と現実のギャップは大きい。最初から神経を取るなどと考える方が誤っている。
仮合わせして、接着作業工程を頭の中に構築する。何事も段取りが重要なのは当然なのだが、突発的な事象にも即応できる対応力も必要になる。
接着作業はプラモデルの接着剤による組み立てと変わるところはない。昔の精度の良くない、隙間の多いキットで苦労した思い出が蘇る。最近のパチパチとはめ込むだけで組み上がるようなものではない。
用意ができたら組み立て再建に入る。
近心根は完全離断はしていなかったので、クラック部分を取り除き再建する。
再建が済んだら次回は再植過程だ。