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カテゴリ:中部地方(北陸・東山・東海)
白川郷からは、直接に高山に向かう路線バスが運行されていてとても楽チンであります。最初に書きましたが、今回は本当ならば高山と郡上八幡を満喫する旅とするはずでした。しかし、同行者の要望もあり、五箇山と白川郷を追加したために高山をじっくりと散策する機会は次に譲った方が良さそうです。なんて、理由を観光のせいにしてしまいましたが、実は都内からの高速バスの運賃が高山行きが富山へのそれの倍額以上という極めて切実かつみみっちい理由もあったのです。高山行きの運賃が高いとは思ったけれど、まさかここまでの開きがあるとはこんな事がなければ知らずに済ませてしまったかも知れぬ。それはともかくとして、ぼくも思いがけず世界遺産となって以来、初めて合掌造りの景色を眺められたのは収穫でした。もう見そびれてしまったという後悔をしなくて済むのですから。というわけで高山に到着し、宿で荷を解きいくつかのヤボ用を終えてついでに喫茶のチェックと立寄りを済ませた頃には日もどっぷりと暮れてしまいました。
高山ではずっと行ってみたいと思っていたお店があります。居酒屋好きであれば容易に想像できるであろう「樽平」です。太田和彦氏の著作や番組でも何度も取り上げておられるので、ぼくなどがあえて饒舌にならずともこの酒場の粋は記録され語り尽くされていることでしょう。詳細はそちらをご覧いただければよろしいかと、と述べると話は簡単なのでありますが、さすがにこんな投げやりなブログではまずかろう。すぐそこと書かれた引き込み看板に促され、店の前に歩みを進めると端正な文字で店名が記された看板があります。分かる人には分かるでしょうが、その生硬さがどこか大映の映画監督、増村保造のタイトル画面のように思えるのでした。通りのそのまた路地からさらに奥まってたたずむ店舗にすぐさま好感を持ちます。内装もそうそうと口に出しそうな位に典型的なものであり、歴史を滲ませながらも少しも劣化した感じはせずとてもとても大事に店を守ってきたのだろうなというのが見て取れるのでした。店は母娘お二人でやっておられたけれどかつてはご主人もおられたのではないか。そんな映像が記憶の隅に残っています。さて、日本酒の呑み比べセットなどを頼むのはいかにも素人臭いがまあ素人だからよかろう。肴は時価といかにも不安であるけれど、ここは鮎の塩焼きは頼まぬわけにはいかぬと思うのだ。そして、そんな鮎はとんでもなく旨いのだ。かつてどれ程の鮎体験をしたかと問われると非常に心許ないのであるけれど、それでもここの鮎の旨さはしみじみ感じられるのです。明日の郡上八幡はそれこそ鮎の名産地であるから、期待は大いに増すのでありました。まあ、結局のことろこの旅で鮎を食するのはこれが最後となったのですけどね。 さてさすがに一軒で済ますのは詰まらぬからとこの後、散々町を彷徨って少なからずの酒場を通り過ぎたのだけれど、これといって心惹かれる酒場が見当たらなかったのです。歩き疲れて途中、もう面倒だから高山ラーメンでも食べてホテルに戻るかと思い直してみたのだけれど、今度はそれすら行き当らぬのだから今回は一軒目が良かった分、割の悪いことだなあと感じたりもしたのでした。駅前に戻ってきて「八角亭」を見掛けた時にはもう物色する気迫すらなくなっていて、もうここでいいやと投げやりに飛び込むことになるのでした。しかしここには非常に憤慨させられたのです。何に憤慨させられたかは詳述せぬけれど、とにかくぼくはもう行くつもりはない。けれど、結構な賑わいだから気に入って通われる常連も少なくないようです。炉端焼きのお店のようだけれど、それらしいところは希薄で、ならばとさっきも頂いた奴をもらうことにします。この辺の地域の奴にはどうも真ん中に練り辛子が仕込まれているようで、それほどピリッと辛いわけではないけれど、それでも風味が良くてちょっと気に入ったのでした。帰京したら真似してやろうと思うのでしたが、実際やったかというと未だに試していないのでした。買ってきた奴サイズの豆腐に辛子のチューブとぶっ刺してニュルっとすればまあそれらしいものになるはずで、非常に手軽な肴だから近いうちにぜひ試してみることにしよう。ということで、いやな思いをしたのだけれど、実は今では何にそれほど腹を立てたのか判然とせぬ―両隣の客に対して苛立ったことは覚えているけれど―けれど、まあちょっとしたアイデア料理を覚えることができたから良しとするのであります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/09/02 08:30:09 AM
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