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テーマ:DVD映画鑑賞(14331)
カテゴリ:日本映画
![]() 人間の條件 DVD-BOX 五味川純平原作、小林正樹監督の超大作(1959松竹)。 正義感の強い青年を通して、戦争の狂気と矛盾を浮き彫りにします(全6部)。 初めて見たのは、12チャンネルで年末年始に一日で12時間ぶっ続けの放映をした時。 ずるずると引き込まれましたが、半分まで見たところで外出の時間となり、 後半(4~6部)は見られず、とても残念でした。 後で母から聞いたところによると、映画会社の企画部にいた父は、 三一書房から小説が出た時、すぐに映画化の企画を出したそうです。 でも、御前会議(社長などにお伺いをたてる)で却下され、非常に悔しがったといいます。 そしてライバル会社で映画となり、日本が誇る作品として後世に残ったわけです。 主演仲代達矢、新珠三千代、その他専属の映画会社や劇団を越えて、 日本を代表する名優らがたくさん顔を揃えています。 まだまだ日本人の大半が悲惨な戦争の当事者だった時代。 殺し、殺され、死体の横を無感動に通り過ぎた経験。 銃を突きつけられ、あるいは逃げまどった経験。 自分の大切な人が死に、自分が生き残っていることの意味を問い続ける日々。 スタッフもキャストも、それぞれの意気込みが伝わってきて、 時代の熱を感じさせる映画でもあります。 今日は、第一部・純愛篇についてご紹介。 青年梶は、植民地である満州(現在の中国東北部)の鉄鉱会社で働いていますが、 「現地人に対する待遇が悪いから逃亡する。待遇をよくすれば、かえって実績が上がる」 という論文を上司に堂々と提出するような、一本気な男です。 「机上の空論ではないことを、現場労務管理者になって証明してみろ」と、 過酷な土地への転任を言い渡されます。 体のよい左遷とわかりつつも、徴兵免除というニンジンに負け、 新婚の妻を連れて、梶は奥地に赴任します。 その土地では折りしも「特殊工人」という名の囚人たちが送り込まれ、 一般の現地工人とは隔離されてタダ働きさせられます。 彼らのほとんどは、政治犯と一緒に連れてこられた、普通の人々なのです。 梶は、彼らに待遇改善を約束し、上司にかけあいますが、なかなか思い通りにいきません。 梶より一枚も二枚も上の、海千山千の連中に翻弄され、 「労務管理者」といっても、気がつけば、囚人に売春婦をあてがう女郎屋の主人同様になり下がり、 自己嫌悪で苦しむばかりです。 去年の夏、WOWOWで毎日曜日、朝8時から一部ずつやったのを久しぶりに見ました。 未見の後半も見る機会を得、長年の懸案がようやく決済された感あり。 迫力に押されまくった初見の日々に比べ、今見ると、また違った感慨も起こりました。 以前は、戦時下でも心に恥じない生き方をしている、すばらしい人として梶を見ていました。 今見ると、戦後ヤミ物資を食べずに餓死したという検事の話に象徴されるような、 「べき論」が「生活」を追いつめる、融通の利かない人間に見えてしかたがありません。 自分だけ正しければ、それでいいのか。 小林正樹監督は、どの人物にもそれをつきつけているように思います。 売春婦に向かって「お前は恥ずかしくないのか!」という囚人・高に対し、 「あんただって同じでしょ。好きで鉄鉱掘ってるの?」 と胸を張る売春婦。 みんな、ぎりぎりのところで生きているのがわかります。 第二部以降も、梶の暴走(?)をリトマス紙にして、 小林監督は、人それぞれの「生きざま」を提示していきます。 理想を持たない生き方がもたらす社会を否定しながら、 理想だけで突っ走る生き方の危うさも描く。 だからこの映画は名作なのだと思います。 去年は、「三池・終わらない炭鉱(やま)の物語」を見て、 日本の内地でも囚人を炭鉱で働かせていた事実を目の当たりにしたばかりだったので、 鉄鉱を堀り、運ぶ工人たちの様子にはリアリティがありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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