『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』なども含め、「温暖化懐疑論」が流布する状況の中、科学者たちはいったい何をしているのか、と思ったことがあります。私でもわかるような間違いや問題が数多く含まれるので「相手にしていない」のか? とも・・・。
しかし、現実の(日本における)社会的影響力を考えると、放置できないのではないか? そもそも私が「しょうのページ」、「しょうのブログ」を立ち上げたのも、このような問題意識が背後にありました。
確かに単行本による科学者の「反論」は少ないのですが、「反論」自体は決して行われていないわけではありません。例えば、東北大学 明日香壽川氏、国立環境研究所 江守正多氏らは実際に「地球温暖化問題懐疑論へのコメント」を公開しています。
冒頭の文章は以下の通りです。
人為的地球温暖化説の信憑性や地球温暖化による被害を緩和するための対策の重要性に対し、懐疑的あるいは否定的な見解をとる議論が日本国内でも存在している。社会からの信頼にその活動基盤を置く科学者コミュニティは、こうした現状を座視すべきではないと考える。したがって、本稿ではこれらの議論から主な論点を拾い上げ、一方的な、あるいは間違った認識に基づくものに対して具体的な反論を行う。(・・・)
本稿は、「IPCC:(気候変動に関する政府間パネル)報告書などの結論に異を唱えること」に対して、すべて「懐疑論」のレッテルを貼ろうとしているわけではない。言うまでもなく、物事に対して懐疑的であることは科学の基本であり、常に必要なことである。
ところが、今なお人為的排出二酸化炭素温暖化説の信頼性や温暖化問題の重要性に対して懐疑的あるいは否定的な議論には、次のような特徴をもつものが多い。
・既存の知見や観測データを誤解あるいは曲解している
・すでに十分に考慮されている事項を、考慮していないと批判する
・多数の事例・根拠に基づいた議論に対して、少数の事例・根拠をもって否定する。
(・・・)
・既存の知見を一方的に疑いながら、自分の立論の根拠に関しては同様な疑いを向けない。
・温暖化対策に関する取り決めの内容などを理解していない
・三段論法の間違いなどロジックとして誤謬がある
このような議論の多くは、これまでの科学の蓄積を無視しており、しばしば独断的な結論に読者を導いている。温暖化のリスクが増大している状況下で、このような議論が社会に広まることを科学者としては看過できない。したがって、私たちは懐疑論に対する具体的な反論をとおして、最新の科学的知見に関する情報発信を行うと同時に、地球温暖化問題の重要性に関する認識の喚起をうながしたいと考える。
以上、明日香氏 HP中の(論文・講演資料データベース⇒地球温暖化懐疑論反論関連)「地球温暖化問題懐疑論へのコメント Ver.3.0 」の冒頭部分です。
上記「コメント」の全体は「科学的なデータと根拠を示しながらきちんとまとめられている」ものです。これは、厳密さに重きを置いてあるためかなりの分量にのぼり、読破するのにも少々骨が折れますね。
しかしながら、様々な問題を含む「懐疑論」が流布し、充分な根拠をもとに積み上げてきた科学の営みが「全く信頼できないかのような言説が横行する」事態を受け、自らの立場を明確にしていくことで科学者としての責任を果たそうとしたものだ、と考えます。
もっと読みやすいものとしては、安井至氏のHPに掲載されている「『偽善エコロジー』(武田邦彦著)に対する反論」などがあります。
反『偽善エコロジー』1
反『偽善エコロジー』2
これらの内容について、一部でも要約・紹介したいと考えるものですが、そもそもなぜこの日本において「そのような反論に力を入れなければならない状況」が生まれたのでしょうか。
日本人の大人の「科学的リテラシー」の問題も指摘されるところですが、報道機関の姿勢にも問題はなかったでしょうか。
スウェーデン在住のYoshiさんは、 「欧州議会選挙における(スウェーデン)有権者の関心No1」は経済政策以上に「環境問題・温暖化問題・エネルギー問題」であることを紹介しておられます。
日本とスウェーデンの現状のこれほどの落差はいったいどこから生まれたのか、という観点からの考察も必要であると考えるのです。 (続く)
追記 なお、本ブログ記事の公開後、発行された『地球温暖化―ほぼすべての質問に答えます!』 (岩波ブックレット)には、Q&A方式で大変わかりやすく(明日香論文のポイントが)まとめられています。
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